フルモデルチェンジにより3代目に進化した「Tiguan」が日本上陸。まずは1.5L TSIエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する「Tiguan eTSI R-Line」をメディア試乗会でチェックした。
新型Tiguanは、MQB evoアーキテクチャーを採用する最新世代のフォルクスワーゲンだ。エクステリアは、従来に比べてボンネットの位置を高くすることでSUVらしさを強める一方、薄いラジエターグリルやスリムなテールライト、前後を彩るLEDライトストリップなど、最新のフォルクスワーゲンデザインを採用したのが特徴だ。
ちなみに、Tiguanという名前は、“tiger”(虎)と“iguana”(イグアナ)を組み合わせた造語であり、リヤサイドウインドーにはこのふたつのイラストが描かれている。
エクステリア以上に様変わりしたのが新型Tiguanのインテリアだ。デジタルメーターの「Digital Cookpit Pro」には覆い被さる“庇(ひさし)”がないぶんより見やすくなり、隣接する15インチの「Discover Pro Max」なんて、私のノートPCよりも画面がでかい(笑) センターコンソールからシフトレバーが消え、かわりにステアリングコラムの右側にステアリングコラムスイッチが設けられたのも新しいところで、これを前後に回転させるなどして行うシフト操作は、慣れれると従来のシフトレバーよりも使いやすい。
ダッシュボードにはハザードランプの物理スイッチがあるだけで、他の設定はすべてタッチパネルで行う。大画面ゆえに画面の上下に必要な項目が常に表示され、アイコンも小さすぎないため、操作性は悪くない。画面下のタッチスイッチにはイルミネーションが設けられ、おかげで夜間でも操作に困ることはなかった。シートベンチレーションの操作についても、Golfではアイコンに触れると空調のメニューが開いたが、新型Tiguanではダイレクトに設定が変えられるので、素早い操作が可能だ。
センターコンソールに設けられたドライビング エクスペリエンス コントロールも新型Tiguanの見どころのひとつ。これでオーディオの音量調整に加えて、ドライビングプロファイル、そして“雰囲気”の変更が可能。雰囲気を変更すると、メーターパネルのデザインやアンビエントライト、サウンド設定(イコライザー)が“ラウンジ”、“ジョイ”、“エネルギッシュ”、“ミニマル”といったテーマにあわせて変わるというもの。もちろん自分好みのカスタマイズも楽しめる。
R-Lineには標準で専用デザインのファブリックシートが装着されるが、“レザーパッケージ”が追加された試乗車ではシートベンチレーション機能付きの前席パワーシートが奢られる。寒い時期だけでなく、夏の暑い時期でも快適なドライブが楽しめるうえ、空気圧式リラクゼーション機能(マッサージ機能)も8種類のパターンから選択できる多機能タイプに変更される。これがなかなか心地よく、とくに長距離ドライブ時には重宝する。
一方、後席は、大人が座っても足が組めるほど余裕たっぷりで、前後スライドやリクライニングが備わるのもうれしいところ。ラゲッジスペースは、後席を使用している状態で奥行きが約90cm、後席を倒せば150cm超えのスペースが現れ、ボディサイズ相応の収納スペースが確保されている。
パワートレインは、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する110kWの1.5 eTSIと142kWの2.0 TDIの2種類を用意。今回試乗したのは前者で、7速DSGとの組み合わせで前輪を駆動する。
さっそく走り出すと、1.5 eTSIは軽快な動き出しを見せる。もともと低回転からトルク十分な1.5 TSIに加えて、マイルドハイブリッドシステムのモーターが加速時にエンジンをアシストすることで、素早く力強く反応するのも、運転のしやすさにつながっている。さほどアクセルペダルを踏み込まなくても上り坂を進むのも頼もしいかぎりだ。一方、アクセルペダルを深く踏み込めば、3000rpmあたりから5000rpmを超えるくらいまで力強い加速を見せ、高速道路への流入や追い越しといった場面で困ることはなかった。
マイルドハイブリッドシステムを搭載する1.5 eTSIは、走行中にアクセルペダルをオフにすると、条件が整えばエンジンが完全に停止して、無駄なガソリンの消費を防いでくれる。さらに、低負荷時に2気筒運転を行うアクティブシリンダーマネージメント(ACT)なども手伝い、低燃費が期待できる。実際、高速道路では20km/Lオーバーの数字を確認しており、お財布に優しいのは見逃せない。
マイルドハイブリッドシステムにより、アイドリングストップの状態からエンジンがスムーズに再始動するのもうれしいところだ。一方、先行車に近づいた状況でアクセルをオフする場面でもエンジンが停止してコースティング(惰力走行)を続けるが、こういうときにはエンジンを再始動してエンジンブレーキをかけてくれるほうが、車間距離を維持するうえでは助かるので、ぜひともそうした制御を盛り込んでほしいものだ。
Tiguan eTSI R-Lineの乗り心地は、20インチタイヤが路面の荒れを伝えたり、目地段差を超える際にショックを遮断しきれないことがあるものの、おおむね快適な走りを実現している。高速走行時の縦の動き(ピッチング)やコーナーでの横の動き(ロール)はきっちりと抑えられており、SUVらしからぬ落ちついた挙動を見せるのは驚くばかりだ。これには新開発のDCC Pro(アダプティブシャシーコントロール)が貢献しており、予算が許すなら、DCC Proが装着されるグレードを選ぶことをお勧めしたい。
ということで、多少気になるところはあるものの、実に良い出来映えの新型Tiguan。年明けにはTDI+4MOTIONの広報車が用意されるということで、その試乗もいまから楽しみだ。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)
■関連サイト
・フォルクスワーゲン公式 Tiguan