アウトビルトジャパン編集部にちょっと古い「Passat (B6)」がやってきました。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

みなさんはPassatをご存じでしょうか? フォルクスワーゲンの上級モデルで、初代Passat (B1)は1973年に発売された(ジウジアーロデザイン!)、実は「Golf」よりも1年先輩にあたる長寿モデルなんです。生産台数は累計3400万台と空冷のBeetleよりも多く生産されています。

以前より筆者は「雨でも気兼ねなく乗ることができるクルマ」「エアコンがあるクルマ」「長距離移動が楽なクルマ」そして何より「安いクルマ」があったらいいなと思って、仕事の合間に中古車ポータルをチェックしていました。雨でも乗れて、エアコンが効いて、長距離移動できるクルマって実は至って普通なことですが、クラシックカーを日常使用していると現代のクルマのすばらしさをひしひしと感じるわけです。

ガイシャへの憧れ

もうひとつ、筆者のクルマ選びの基準の一つに「左ハンドル」つまり「輸入車」であることがあります。スーパーカー世代の筆者は「ガイシャ」に強い憧れを持っています。そしていまもガイシャなら、その国のオリジナル状態で乗りたいという気持ちがあって、日本車なら日本の交通事情に合わせて設計されるように、その国の「空気感」を「左ハンドル」から見える景色を見て、そのクルマの成りを知りたいのです。

クラシックカーに乗っていると必ず「足車は?」「メインのクルマは?」と聞かれます。筆者の答えは「今探しているところです」とお茶を濁してきました。社用車とはいえ「2台持ち」なんてできませんし、輸入車のほとんどが「右ハンドル」な昨今、簡単に筆者のお眼鏡にかなうクルマは出てきませんから。

出会いは突然に

そんな初夏のある日、いつも大変お世話になっているエンスーさんから「雨でも乗れるクルマが必要でしょ?」「お勧めのメルセデスBクラスがあるから一度確認してください」と悪魔のささやきが入りました。いつもお世話になっているので無下にお断りできず、条件などをお聞きしたのですが、Bクラスは拙宅の天井が低いガレージにはギリギリ入らないことが判明し、お断りせざるを得ませんでした。

自称メルセデス乗りの筆者としては興味があったのですが……。「右ハンドル」のメルセデスを買わずに済んで内心ホッとしたのでした。

なぜPASSAT?

すると、ほどなくしてまた悪魔のささやきが入ります。「今度はガレージに入るとってもいいクルマが出てきたから確認して!」もちろん、ひとつ返事で「確認させていただきます!」とお答えして、週末に実車を見に行かせていただきました。

そのクルマはPassat (B6)という2008年登録のセダンで、「Golf2」、「Santana」2台と「Audi 80」2台を乗り継いだ経験のある筆者としてはなじみ深く、しばらくフォルクスワーゲンを所有しなかったので興味もあり、拒絶反応は起きませんでした。

しかし!「右ハンドル」です。当時「左ハンドル」の設定もあったのでとても残念でした。さらに、Passat (B6)はGolf5ベースでAudi A4とは兄弟車ではないと。おまけにトップグレードの「V6 4MOTION」という「Golf R32」にも搭載された挟角3.2L V6、フルタイム4WDという複雑な構造であることを知って、ネガティブイメージを持ったのであります。「足車」にツインカムも4WDも要りませんから。

ところが、試乗させていただくと一瞬で印象が変わります。「いいじゃんコレ!」。試乗に同行くださったエンスー氏も「いいでしょコレ」と。試乗を終えた筆者は、車屋さんの「返事は後でいいですから、このまま乗って帰っていいですよ」のお言葉に甘えて乗って帰るのでした。

ビジネスマンズエクスプレス

真っ黒なインテリアとごっついスポーツシートにパサートとの違和感を感じながら第三京浜を確かめながらゆっくりと流したファーストインプレッションは「Eクラス要らず」でした。フォルクスワーゲンならではの直進安定性、4気筒版にはない余裕の動力性能、すばらしいコーナリング性能をもたらす4WDの4MOTION、シフトショックがなく速いシフトのDSG、と良いことずくめじゃありませんか。「右ハンドル」でもいい!とあっさり納得してしまいました(笑)

くつろげる後席

後席もスポーツシートのように身体にフィットし、安定感と心地よさがあり、Eクラスの後席に慣れた家人も気に入った様子。とにかくレッグルームが広く、ヘッドクリアランスもたっぷりあるので、まさにくつろげる空間です。

週末を挟んで「買います!」とお返事したのはいうまでもありません。

長期テスト車としてレポートします

果たして、ちょっと古いクルマのPassatは“買い”なのか? これから日常使いにおけるインプレッション、メンテナンスをレポートしていきますので、どうぞお楽しみに!

(Text & Photos by Auto Bild Japan)