1987年、アメリカのコロラド州で開催される「パイクスピーク インターナショナル ヒルクライム」に挑むために、フォルクスワーゲンが製作したのが「Golf Pikes Peak」だ。

パイクスピーク インターナショナル ヒルクライムは、アメリカ・コロラド州のワインディングロードを舞台に、標高1400mあまりを一気に駆け抜けるタイムトライアル。フォルクスワーゲンはアメリカ市場での人気上昇を狙い、1985年、Golf2を改造したマシンで、伝統のイベントに臨んだ。

1985年のGolf2は、1.8L 直列4気筒DOHCエンジンを前後に搭載することで4WDを構成し、トータル出力は390psに達した。そのステアリングを握ったのは、フォルクスワーゲン初のワークスドライバーであるクラウス-ヨアヒム(ヨヒ)・クライント。彼の記録は12分31秒57で、当時のオープンラリークラスで3位という成績。クラストップはミシェル・ムートンが駆る「Audi Sport quattro S1」。ゴール地点の標高が4000mを超えるパイクスピークでは過給器付きエンジンが有利で、Golf2よりも約66秒速い11分25秒39をマークしている。

そこでフォルクスワーゲンは翌1986年にマシンを改良。ポロ用の1.3Lにターボを装着したエンジン2基により、トータル500psを実現した。しかしタイムアタック時に電気系のトラブルに見舞われ、ヨヒが駆るGolf2は12分31秒93と前年を下回るタイムでクラス4位に終わる。一方、Audiはボビー・アンサーがコースレコードとなる11分9秒22で、2年連続の勝利を収めている。

市販車をベースとしたマシンに限界を感じたフォルクスワーゲンは、1987年のパイクスピークに向けてマシンを刷新。パイプフレームのシャシーにFRPのボディを被せたGolf Pikes Peakを投入した。前後に搭載される1.8Lターボはそれぞれ326psの実力を誇る。

満を持して臨んだ3年目のパイクスピークでは、ヴァルター・ロールがドライブするライバルのAudi Sport quattro S1を途中まで約1秒上回っていたが、ゴールまであとコーナー3つという地点で右フロントのサスペンションが破損してリタイヤ。フォルクスワーゲンはAudiの3連覇を阻むことは叶わなかった。

その後、2017年から2018年かけてGolf Pikes Peakはレストアされ、「50 Years of Sporty Golf(スポーツゴルフの50年展)」にはドライバーのヨヒとともにその勇姿を現した。

ヨヒ・クライントのインタビュー動画はこちら

Jochi Kleint × Golf2 Pikes Peak

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(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Volkswagen Japan, Volkswagen Classic,Volkswagen AG)