1980年代半ば、VWはすでに電気自動車の実験を行っていた。この実験車「VW Golf 2シティストローマー」は、わずか93台しか製造されず、VW社内の研究開発に使用されただけだった。はたしてこのクルマはクラシック・オブ・ザ・デイ(今日の名車)と言えるか?

1985年、VWは「Golf 2シティストローマー」で、ドイツでもっとも人気のある自動車を電動化した。これは、「道路交通のための新技術」を推進しようとする連邦政府からの研究費によって行われた、高価な実験であった。

※この記事は「Auto Bild JAPAN Web」より転載したものです。

1991年までに、保存状態の良い「Golf 2」をベースに、93台の「E-Golf」が製造されたが、現在では数台の行方が分かっているのみである。さらにさかのぼって、VWは1970年代にすでに電気自動車「Golf 1」の実験を行っており、こちらの記事で紹介している。

【Auto Bild】40年前の大予言!? VWは40年前にGolf 1 EVを作っていた。その理由とは?
https://8speed.net/vw/17619632

航続距離40~70kmのE-Golf 2

「シティストローマー」の駆動用バッテリーは、容量160Ahの96ボルトの鉛ゲルバッテリーである。エンジンルームは、e-driveのマイクロプロセッサー制御で占められている。12kWのDCモーターは、その下に横向きに配置され、クラッチハウジングにフランジ接続されていた。

エンジンルームを見ると、すでに複雑なマイクロプロセッサーによるe-driveの制御が見て取れる。

電動モーターの理想的な回転域は2000~5000回転で、重いバッテリーパックはラゲッジルームにあり、アース付きプラグの充電接続は、折りたたみ式の特別なラジエーターグリルの後ろにある。この重量比により、「シティストローマー」は控えめなコーナリングを実現している。最高速度は100km/hで、航続距離は40~70kmだった。

「Golf 2シティストローマー」はすべて研究開発車両

ダッシュボードには電気燃料計やプラグのマークがあるなど、細部に至るまで充実した装備とデザインが施されている。センターコンソールには、リアバッテリーの充電状況を表示するディスプレイが設置されている。

デジタルとアナログの出会い:センターコンソールのディスプレイには、後部のバッテリーパックの充電状況が表示される。

「シティストローマー」はすべて、自治体や企業による継続運転のためのテスト車両として使用された。1991年の新車価格は、49,500マルク(約377万円)という高値だった。現存する「Golf 2シティストローマー」のオーナーの中には、インターネットのフォーラムで、自分の車を紹介している人もいる。

(Text by Matthias Techau and Jan-Henrik Muche / Photos by AUTO BILD / Christian Bittmann)