皆様ご無沙汰しております。5年ぶりのコラム復活となります。またここでコラム的なものを書かせていただくことになりました。よろしくお願いします。

さて、5年前というと、e-Golfが発売されたのが2017年秋でした。すでにこの頃フォルクスワーゲンはEV化に大きく舵を切っていました。まあ、これはフォルクスワーゲンがというよりも欧州政府ともいえる欧州委員会の意向なので、メーカーは否が応でも従わなくてはならないわけで、フォルクスワーゲンもその渦中にあったということです。

じつはこの頃、フォルクスワーゲンはGolf7ディーゼルとe-Golfを比べた時、製造段階でのCO2排出相当量は、Golf7ディーゼルが29g/km、e-Golfが57g/kmで、じつはe-GolfのほうがCO2排出力が多いことを公表しているんです。電気を作るときにもCO2を発生しますからLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)でいうとゼロにはならないわけです。

同様の試算はマツダでも発表していて、合算すると10万キロ近く走らないとCO2は排出量の総量は逆転しないというレポートが発表されています。その試算に基づいたもっとも効率の良いバッテリーの大きさが35.4kWhなのだそうで、e-Golfも、マツダMX-30も、ホンダeもバッテリーサイズはほぼ同じ35.5kWhなんです。

このe-Golfで日本EVラリーというイベントに参加するため、東京都品川区の御殿山から白馬までドライブする機会がありました。軽井沢経由のルートを選び、総走行距離は288㎞。1回充電で楽勝! と思ったら思いのほかバッテリーの減りが早く、関越自動車道の上里SAで1回。フル充電にはなりませんでしたが、まあいいかと発進。藤岡で上越自動車道に分岐して碓氷峠でみるみる充電量が減っていくのにおののき、小諸から先でやや下り坂になって電費が良くなる(=航続可能距離が延びる)のにいくらかほっとしながら東部湯ノ丸SAで2回目の充電。30分じゃお腹いっぱいにならないので、周りに充電待ちのEVがいないのを確認しておかわり(碓氷峠で身に沁みました)。結局6時間近くかけて白馬に到着したのでした。

大変かと聞かれると、じつは電費とにらめっこしながらあれこれ知恵を絞りながら走るのは案外楽しく、こういうドライブもありだなと感じたのはウソではありません。ただ、目的地までストレスなく速く移動するには向かないなとも思いました。

数年後、やはり都内から白馬まで、今度はジャガーのEVであるI-PACEで中央道回りでドライブしたのですが、もっとも大きな違いはバッテリー容量による航続距離で、想像以上にドライブに余裕をもたらしてくれました。充電地点の選択の自由度がぐんと広がったのです。

当然充電回数は1回。多分無充電でもいけなくはないと思うのですが、余裕を見て1回。30分の充電でも目的地までは行けたのですが、目的地の充電施設は200vの普通充電。翌日のイベント時に満充電にしておきたかったので、念のためおかわり1回。

LCAのCO2排出量のことを棚上げすれば、バッテリーの大容量化でとてもロングドライブが便利になることが分かりました。その一方、今ある急速充電施設のほとんどは相変わらず40kW、場所によっては30kWで、充電施設はまったくと言いたくなるくらい変わっていないのが現状です。

年内にアウディ・ポルシェ・フォルクスワーゲンが120kW級の充電施設を展開するということなので、充電インフラはこれから変わっていくのでしょう。

そうこうしているうちに巷では水素やカーボンニュートラルの代替燃料にスポットライトがあてられるようになりました。

何年か前にフォルクスワーゲンのエンジニアにEVの是非について質問したら、「その議論は終わっている」とにべもなかったのですが、だいぶ風向きが変わってきているように感じます。当然フォルクスワーゲンも水素の研究は進めているわけです。そもそもドイツ工業会が欧州委員会に対してEV以外の選択肢を求める働きかけを行っているのです。

時代は刻々と変わっているようです。昭和のおじさんは内燃機関が好きなので、EVの面白さや可能性は十分に分かっているつもりですが、内燃機関であるガソリンエンジンの、回転が上がるほどにパワーが盛り上がってくる感じに思い入れがあるので、内燃機関も生き残ってくれると嬉しいなと思う今日この頃です。

(Text by Satoshi Saito)