ID.4を買う前からずっと気になっていたのが、雪道での走り。その実力を試すために、福島県の裏磐梯までドライブに行ってきました!
ご存じのとおり、日本で販売されているID.4はリヤアクスルにモーターを搭載し、後輪を駆動する「RR」を採用しています。「FF(前輪駆動)」や「4WD」に比べて雪道に弱いというイメージがあるだけに、ID.4がどんな走りを見せるのか、ずっと興味がありました。
今回はフォルクスワーゲン ジャパンが取材用に貸し出している“広報車”にスタッドレスタイヤが装着されているということで、ストーンウォッシュドブルーメタリックの「ID.4 Pro Launch Edition」をお借りして、裏磐梯に向かいました。
この日は常磐道〜磐越道というルートで、まずは猪苗代磐梯高原インターを目指します。前日からの雪で、郡山JCTを過ぎたあたりから路面に雪が現れ、猪苗代磐梯高原インターに着いたときには道路はすっかり雪に覆われていました。
いつも以上に緊張しながら圧雪状態の一般道に出ると、良い意味で予想を裏切られることに。RRのID.4は想像以上に直進性が良く、安定感のある走りを見せてくれたのです。アクセルペダルを踏みすぎなければ発進もスムーズで、リヤが左右に振られるような動きもありません。加速する場面でも、駆動輪であるリヤがしっかりと踏ん張る感じ。ID.4 Proの前後軸重は前1010kg、後1130kgとややリヤ寄りであり、さらに、加速時にはリヤに荷重が増えるため、リヤタイヤのグリップを生かすことができるわけです。とくに上り坂やその発進ではRRのメリットが生かされ、FFよりもホイールスピンが少なく、安定した走りが楽しめました。
カーブでも手前でしっかりと減速すれば挙動は安定しています。コーナリング中にアクセルペダルを踏みすぎると、リヤが外に振り出す感じはありますが、ESCがあるおかげでまず安心。FFでもコーナーでアクセルペダルを踏みすぎるとフロントが外に膨らむ“アンダーステア”が発生しますから、必要以上にアクセルペダルを踏みすぎない、急発進、急ハンドル、急ブレーキをしないという原則は、どの駆動方式でも変わりません。
下り坂では、微妙にアクセルペダルを戻すことで弱いブレーキがかけられる回生ブレーキが重宝します。ただ、車両重量が2140kgとやや重いので、下り坂ではいつも以上に早めの減速を心がけました。
気になったのは回生ブレーキの効き。強めの回生ブレーキが効く「Bレンジ」を選び、アクセルペダルを一気にオフにすると、凍結した道路では平坦な場所でも一瞬遅れてリヤが軽く流れるような、不安定な動きを見せることがありました。といっても、クルマの姿勢が乱れるほどではないのですが、ちょっとドキッとします。路面のグリップが低い状態で、強めの回生ブレーキがリヤのみに効くからでしょう。アクセルペダルを完全にオフせず、軽く回生ブレーキをかけるよう心がければ大丈夫です。
それでも、とっさにアクセルペダルから足を離してしまうこともあるので、回生ブレーキを弱めにできれば良いのですが……。同じMEBプラットフォームを利用する「Audi Q4 e-tron」では回生ブレーキのレベルをステアリングホイールのパドルで調整できますが、ID.4にはその機能がありません。ふだん運転するうえでは回生ブレーキのレベル調整は不要と思っていましたが、今回はじめてレベル調整がほしいと思いました。
でも、実は“裏ワザ”があって、ドライビングプロファイルで「スポーツモード」を選んだり、「カスタムモード」で“ドライブ”の項目をスポーツに設定すると、通常のDレンジでも回生ブレーキが効くようになり、しかもBレンジよりも回生ブレーキの効きを少し弱くできます。この状態ならアクセルペダルを一気にオフにしても不安定な動きは見られず、途中からはカスタムモードでずっと走りました。加速時のアクセルレスポンスが少し敏感になりますが、それにはすぐに慣れましたし。
ということで、オーバースピードや“急”のつく操作を避ければ、RRであっても不安なく走れるID.4。4WDやFFと同じとは言わないまでも、ID.4のスノードライブは決して難しいものではありませんでしたし、アクセルペダルでテールスライドをコントロールしながらのドライブは、なかなか楽しいものです。
機会があれば、愛車のID.4 Pro Launch Editionでもスノードライブに出かけたいと思います。
(Text & Photos by Satoshi Ubukata)