フルモデルチェンジした「Golf R Variant」が日本上陸。その走りの進化を箱根でチェックした。

4代目Golfの時代に、3.2L VR6エンジンと4MOTION(=4WD)により新しいスポーツモデルとして登場したのが「Golf R32」。その後、モデルチェンジを重ね、6代目Golfの時代には2.0 TSIエンジンを搭載するようになり、「Golf R」としてシリーズのトップモデルとして君臨し続けてきた。7代目Golfの時代にはステーションワゴンのGolf R Variantが追加され、より幅広い人々に支持されてきたGolf Rがフルモデルチェンジし、ついに日本でも発売になった。

その概要については上記のニュースをご一読いただくとして、今回、箱根で開かれたプレス向け試乗会でチェックしたのが、ステーションワゴン版のGolf R Variantだ。

用意されていた試乗車はオプションのDCCパッケージが選択され、標準の225/40R18タイヤに代えて235/35R19インチタイヤが装着されている。

Golf 7.5 R(写真左)とGolf8 R Variant(写真右)

ブルーがアクセントの室内は、R専用にデザインされたヘッドレスト一体のトップスポーツシートやRボタンが備わるステアリングホイールなどが、走り出す前からドライバーの期待を高めてくれる。

一方、トップスポートシート自体はR-Lineと色違いで、600万円以上のモデルでありながらポジション調整が手動というのがすこし寂しいところ。また、標準の「コンフォート」「スポーツ」「レース」「カスタム」に加えて、ニュルブルクリンク北コースに最適化した「スペシャル」と、ドリフトが可能な「ドリフト」のモードが利用できる「Rパフォーマンスパッケージ」が日本で選択できないのも残念な点だ。

そんなことを考えながら、まずはコンフォートモードでクルマを発進させると、すこし硬めではあるものの、快適でマイルドな乗り心地に驚かされる。DCCのないGolf Variant eTSI R-Lineよりもむしろ快適に思えるほどだ。

一方、コンフォートモードではアクセルペダルに対するエンジンの反応がやや鈍く、のんびりした印象を受ける。そこで、モードをカスタムに変えて、DCCをコンフォート、他をスポーツに設定すると、エンジンは期待どおりに鋭い反応になり、それでいて乗り心地は快適という絶妙なセッティングになった。

Golf R Variantに搭載される2.0 TSI“EA888 evo4”エンジンは低回転からトルクが豊かで、ターボラグをあまり感じさせないレスポンスの良さも手伝って、街中でも実に扱いやすい特性。必要な加速も、軽くアクセルペダルを踏み増すだけですむ。

一方、アクセルペダルを思い切り踏み込むと、旧型に比べて加速時のサウンドはだいぶ大人しい印象だが加速は鋭く、とくに4,000rpmあたりからレッドゾーンの6,500rpmまで一気に吹け上がるさまは痛快そのものである。

2.0 TSIエンジンの威力もさることながら、新型Golf R Variantのハイライトは進化した4MOTIONにある。エンジンのトルクをフロントとリヤアクスルに配分するだけでなく、リヤアクスルの左右のトルク配分を自在にコントロールし、コーナリング性能を高める「Rパフォーマンス トルクベクタリング」が標準で搭載されるのだ。

その効果は絶大で、まさにアンダーステア知らず! コーナーの途中でアクセルペダルを踏み込んでいくと、これまでのGolf R Variantならアンダーステアでクルマが外に膨らんだのに対して、新型Golf R Variantでは狙ったとおりのラインをトレースし、よりハイスピードでコーナーから脱出することができるのだ。そのときの接地感はきわめて高く、安心してアクセルペダルが踏めるのが実に頼もしい。

ふだん使いも、スポーツドライビングも見事にこなす新型Golf R Variant。その完成度の高さに脱帽である。

(Text & photos by Satoshi Ubukata)