2022年7月にマイナーチェンジ版が導入された「T-Roc」から、人気のTDIエンジンを積む「T-Roc TDI Style」と「T-Roc TDI R-Line」をチェックした。

※T-Roc TDI R-Lineを追加しました

現在販売されているT-Rocには、1.5L TSIエンジンを積むFF仕様の「T-Roc TSI」と、2.0 TDIエンジン、FFの「T-Roc TDI」、さらに2.0 TSIと4MOTIONを組み合わせた「T-Roc R」が用意されている。今回試乗したのは、TDIエンジンを搭載する装備充実の「Style」とスポーティな内外装の「R-Line」である。

まずはT-Roc TDI Styleから。マイナーチェンジの概要は上記のニュースをご一読いただくとして、実車をチェックすると、内外装のさまざまな部分に手が加えられているのがわかる。たとえばエクステリアは、フロントのVWエンブレムの両側にLEDのライトストリップが装着されたことに加えて、バンパーやデイタイムランニングライトのデザインがリニューアルされ、これまで以上に存在感を増している。

エクステリア以上に変わったのがインテリアデザイン。Discover Proのディスプレイがタブレット風のデザインに変わり、さらに、タッチコントロール式のエアコン操作パネルや新デザインのステアリングホイールを採用。ダッシュボードやドアトリムにステッチが施されたソフト素材が装着されるおかげで、現行の「Golf8」よりも見栄えが良いくらいだ。

さらに試乗車にはオプションのレザーシートパッケージや電動パノラマスライディングルーフが奢られたことで、心地よい空間が広がっていた。

搭載されるエンジンは、これまで同様、最高出力110kW(150ps)、最大トルク340Nmを発揮する2.0 TDI。7速DSGを介して前輪を駆動し、WLTCモード燃費で18.6km/Lをマークするのも従来どおりだ。

さっそく走り出すと、低回転から豊かなトルクを発揮する2.0 TDIは動き出しから力強く、1460kgのボディを軽々と加速してみせる。アクセルペダルの動きにも素速く反応し、さらにアクセルペダルを深く踏むと、4000rpmを超えたあたりまで力強い加速が続くのは頼もしいのひと言だ。

加速時のエンジン音や振動は、最新のGolf8 TDIに比べてやや大きめだが、ある程度スピードが上がればさほど気にならない。湿式多板クラッチ式の7速DSGは動きもスムーズで、TDIとのマッチングも上々である。

T-Roc TDI Styleには215/55R17と比較的おとなしいサイズのタイヤが装着されるが、そのわりに路面によってはやや乗り心地が粗く、後席の乗り心地は同じ日に試乗した「T-Roc R」のほうがむしろ快適だった。一方、高速道路でのフラット感や、ハッチバックやステーションワゴンから乗り換えても違和感のないハンドリングなどは、T-Rocの美点といえる。

T-Roc TDI Styleが215/55R17タイヤを装着するのに対し、T-Roc TDI R-Lineには1インチアップの215/50R18タイヤを標準装着。オプションのアダプティブシャシーコントロールの“DCC”を選んだ場合には2インチアップの225/40R19タイヤが装着される。

試乗車はDCC装着車で、225/40R19タイヤとR-Line専用スポーツサスペンションにより、T-Roc TDI Styleに比べて明らかに硬めの乗り心地を示したが、DCCのおかげでT-Roc TDI Styleで感じられた粗さは抑えられており、高速走行時のフラット感も向上している。一方、19インチタイヤとプログレッシブステアリングにより、T-Roc TDI Styleを上回るスポーティなハンドリングが楽しめた。

とはいえ、スポーティなハンドリングだけでなく快適性の点でもT-Roc Rのほうが上で、トーションビームリヤサスペンションを採用するノーマルグレードに対して、マルチリンクリヤサスペンションとDCCを標準装着するT-Roc Rは、理想的な走りの持ち主であることがわかる。

それはさておき、いずれのグレードもマイナーチェンジで魅力が向上したのは確かで、Golf8の一番のライバルは身内のT-Rocかもしれない。

(Text & photos by Satoshi Ubukata)