■EA266 ■De Agostini ■Italy ■1/43

カブトムシの後継車を開発しなくちゃ……という思いが浮かんでは消える1950年代のフォルクスワーゲン社内。依然売れていたビートルを上回る新型車のコンセプトづくりは混迷を極めたようです。

1960年代になり他メーカーが続々とニューモデルを投入する中、フォルクスワーゲンは偉大なビートルをいかに超えるかに腐心し、あーでもない、こーでもない、とさまざまなプロトタイプを生み出していました。よくこんなモデルがミニカー化されたなぁ、という今回のクルマは、EA266と呼ばれるプロトタイプ。

実績のある空冷を引き継ぐのか、リヤ駆動を残すのか、まさに苦悩を続けるフォルクスワーゲン首脳陣がポルシェ社に依頼し生まれたEA266は、後部座席の下にエンジンを置くアンダーフロアミッドシップで、かつリヤ駆動という独創的なメカニズム。薄いノーズはトランクルームでしかなく、ハンドリングはスポーツカー並だったそうですが、いかんせん、そのエンジン位置、整備性が最悪で生産コストも高額だったとのこと。

1971年にフォルクスワーゲン3代目社長に就任したルドルフ・ライディング氏は、その大衆車にしては特異な構造のEA266の開発中止を命じ、フロントエンジン・前輪駆動(FF)の新型車開発に着手、そこからわずか3年でかの初代ゴルフが誕生します。

このグリーンのEA266は、ウォルフスブルクのミュージアムに展示されている実車を模したものでしょう。市販されていたら、きっと面白いクルマになったのでしょうけれど、その後半世紀も揺るがないコンセプトのゴルフのようになれたのかどうか……。

革新的な機構が、そのデザインにも現れているEA266、当時は、フォルクスワーゲンの未来を担うオーラに溢れていた様子が目に浮かびます。素っ気ない印象のゴルフがEA266に代わって量産ラインに乗ったワケですが、今日に続くフォルクスワーゲン発展の礎には、このEA266の存在も無視できないものがあるのでしょう。なんとも珍しい車種のミニカーがあったものです。

das kleine Golfgang(ダス クライネゴルフガング)は、ゴルフのミニカー、"Golf玩具"にまつわるコラム。1974年に実車が誕生して以来、古今東西でつくられてきたゴルフのミニカーたちの小さなボディに垣間見えるストーリーを、小さく紹介しています。101回目以降、ゴルフ以外の水冷VWも紹介していきます。