ハッチバックに続き、フルモデルチェンジにより進化した「ゴルフ ヴァリアント」のなかから、1.5eTSIを搭載する「ゴルフ ヴァリアントeTSI Style」をプレス試乗会でチェックした。

ゴルフ8の上陸から1カ月半、ステーションワゴンのゴルフ ヴァリアントが日本でも発売になった。ハッチバックは、「デジタル化」「電動化」「ドライバーアシスタンスシステムの充実」を図ることで大きく変貌を遂げているが、ゴルフ ヴァリアントはこれらに加えて、さらに独自の進化でより魅力的なクルマに生まれ変わっている。

その独自の進化とは、ハッチバックに比べてホイールベースが50mm長くなったこと。ゴルフ ヴァリアントは3代目ゴルフの時代に登場しているが、これまではハッチバックと同じホイールベースだった。ところが、この新型ゴルフ ヴァリアントでは初めてハッチバックと異なるホイールベースとなり、後席のスペースはハッチバックをさらに上回る広さを確保。前席と膝のあいだには20cm強のスペースがあり、脚が組めるほど余裕がある。これはひとクラス上の「メルセデス・ベンツCクラスステーションワゴン」や「BMW 3シリーズ ツーリング」を超える広さである。

ホイールベースが延長されたおかげで、ゴルフ ヴァリアントのサイドビューはこれまでよりも伸びやかになり、ゴルフの派生モデルというよりも、パサートとのギャップを埋める上級モデルに生まれ変わったという印象である。

旧型に比べて全長が65mm伸びたぶん、新型のラゲッジスペースも若干ではあるが拡大している。

ラゲッジスペースのフロアは2段階で高さの調整が可能で、フロアボードを上の段に設置すれば、リヤの開口部とラゲッジのフロアの段差がなくなり、荷物の積み下ろしが楽になる。また、この状態で後席を倒せばフラットなフロアが現れるので、大きな荷物を積むのに適している。

ラゲッジスペースのレバーを操作するだけで簡単に後席を倒すことができたり、使用しないときにラゲッジネットパーティションやスライディングカバーを床下に収納できるのは従来どおりだ。

新しい機能として、ゴルフ ヴァリアントとして初めてパワーテールゲートを設定(オプションの“テクノロジーパッケージ”に含まれる)したのも見逃せない。これを選ぶと、足の動きでテールゲートを開けることができる“Easy Open”機能が利用可能になる。

今回試乗したのは、1.5eTSIを搭載するゴルフ ヴァリアントeTSI Style(384万6000円)で、純正ナビゲーションシステムなどを含む“Discover Proパッケージ”(19万8000円)、IQ.LIGHTやパワーテールゲートなどを含む“テクノロジーパッケージ”(18万7000円)、電動パノラマスライディングルーフとHarman Kardonのプレミアムサウンドシステムからなる“ラグジュアリーパッケージ”(25万3000円)を装着。キングズレッドメタリックのボディカラーは3万3000円の有償オプションである。

ゴルフ ヴァリアントeTSI Styleには、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載するEA211evoシリーズの1.5eTSIエンジンが搭載される。これは、ハッチバックの「ゴルフeTSI Style」や「ゴルフeTSI R-Line」 と同じもので、最高出力150psを発揮する1.5L直列4気筒ターボには乾式7速DSGが組み合わされている。

この1.5eTSIを手に入れたゴルフ ヴァリアントeTSI Styleは、従来の1.4 TSIエンジンに対して低回転からこれまで以上に素早く、力強い加速を見せてくれるとともに、静粛性やスムーズさが向上。エンジンの進化に加えて、48Vマイルドハイブリッドシステムが、加速時にモーターがエンジンをアシストすることで、より活発な走りを実現してくれているのだ。

大きな加速が必要な場面でアクセルペダルを強く踏み込めば、3000rpm半ばからさらに力強さを増し、その勢いはレブリミットまで続く。

先代のゴルフ ヴァリアントの1.4 TSIには、気筒休止機能のアクティブシリンダーマネージメント(ACT)が搭載されていなかったが、この新型の1.5eTSIにはACTが採用され、アクセルペダルを軽く踏んで巡航する場面では、自動的に「2シリンダーモード」に切り替わり、燃料をセーブ。さらに、走行中にアクセルペダルから右足を離すとエンジンを停止して燃料の消費を抑える「エココースティング機能」が頻繁に働く。今回は短距離の試乗だったために燃費のチェックはできなかったが、ハッチバック同様、低燃費が期待できる。

ハッチバックに比べて車両重量が70kg、パノラマスライディングルーフ装着車はさらに30kg重いゴルフ ヴァリアントeTSI Styleは、ホイールベースが50mm長いこともあって、ハッチバックよりも落ち着いた挙動を見せてくれる。装着される17インチタイヤに多少粗い感触はあるものの、乗り心地は快適で、ハッチバック以上に上質な乗り味は、正直期待以上の仕上がりである。

ワインディングロードではしなやかな動きを見せるサスペンションがしっかりと路面を捉え、見た目以上に軽快な走りを楽しむことができた。

フルモデルチェンジにより大きく進化したゴルフだが、ステーションワゴンのヴァリアントは、パッケージングや走りの部分でそれをさらに上回る魅力を手に入れている。同じグレードなら約14万円のエクストラで購入できることを考えると、これはなかなか魅力的な選択肢だと思う。

(Text & photos by Satoshi Ubukata)