マイナーチェンジを機に新たに設定された「アルテオン シューティングブレーク」をチェック。その魅力とは?
フォルクスワーゲンきってのスタイリッシュなグランツーリスモである「アルテオン」は、2020年6月にフェイスリフトを実施していたが、約1年遅れで日本に上陸。さらに、“4ドアクーペ”のアルテオンに加えて、ワゴンスタイルの「アルテオン シューティングブレーク」が設定されることになった。
最新モデルの概要は上記のニュースをご覧いただくとして、そもそも“シューティングブレーク”とは、2ドアクーペをベースに実用的な荷室を組み合わせたボディタイプを指すが、それを拡大解釈し、4ドアクーペをベースとしたワゴンを含めるのが21世紀のシューティングブレークである。
このアルテオン シューティングブレークも、ファストバックスタイルの4ドアクーペであるアルテオンをベースに、Bピラー以降に独自のデザインを採用することでステーションワゴンの機能性を追加したのが特徴である。
ファストバックのアルテオンでもその荷室は563〜1557Lと十分に広いが、このシューティングブレークはリヤシート使用時が565L、リヤシートをすべて収納した場合は1632Lとラゲッジスペースが拡大。数字で比べるとあまり差がないように思えるが、ワゴンスタイルだけに荷物の出し入れがしやすいうえに、雨の日などはテールゲートが雨除けになるなど、使い勝手が良いのがうれしい。
後方に延ばされたルーフのおかげで、後席のヘッドルームも拡大。ファストバックでは長身の人は頭上がやや窮屈だったが、シューティングブレークではそれが解消されている。足元は余裕で足が組めるほど余裕があり、後席に人を乗せる機会が多い人や、荷物が多い人にはまさに打ってつけのモデルといえる。
運転席に座ると、以前とは少し異なる風景が目に入る。「エレガンス」の場合、ナチュラルなウッドパネルが装着されるが、それを覆うようにステッチが施された人工皮革のパッドが配されることで、ツートーンのナパレザーシートとあいまって、上質な雰囲気に磨きがかかった印象なのだ。
一方、マイナーチェンジを機にダッシュボードのアナログ時計がなくなってしまったのは少し残念。エアコンのパネルの一新され、タッチスライダーにより温度調節が可能だが、個人的にはダイヤルをカチカチと回す従来方式のほうが使いやすいように思うのだが……。
それはさておき、さっそく走り出すと、2.0 TSIと7速DSGを組み合わせたパワートレインやDCCが標準のシャシーが、以前にも増してバランス良くまとまっている印象だ。
2.0 TSIのスペックは、マイナーチェンジの前後で最大トルクは350Nmで変わらないが、最高出力は280psから272psへと若干ダウン。とはいえ、ゴルフR譲りのこのエンジンは、低回転から余裕あるトルクを発揮するうえ、マイナーチェンジ前に比べてアクセル操作に対する反応が向上した印象で、巡航時にちょっと速度を上げたい場面でスッと加速するのが実に好ましい。
一方、高速で本線に合流するときなど、アクセルペダルを深く踏み込んでやると、4000rpmあたりからさらに勢いを増し、レブリミットまでスポーティで気持ちの良い加速が続く。しかも、4WDの4MOTIONがそのパワーをしっかりと路面に伝えるため、ドライ路面はいうまでもなく、ウェットでも安心してアクセルペダルを踏むことができるのがうれしい。
このエレガンスには245/35R20の「P ZERO」が装着されており、荒れた路面では多少ショックを伝えるものの、乗り心地は概ねマイルドで、走行時の挙動も安定している。高速走行時の直進安定性も抜群である。ダンピングコントロールサスペンションのDCCが標準で装着されており、その恩恵が大きいのだ。
今回は試乗会という短時間のテストだったが、ゴルフやパサートの上位モデルとして、魅力あるモデルであることが確認できたアルテオン シューティングブレーク。今後、機会を見てファストバックのアルテオンもチェックするつもりなので、どうぞお楽しみに!
(Text & photos by Satoshi Ubukata)