イギリスのRacingLine(レーシングライン)社が、フォルクスワーゲン/アウディ車用に開発したチューニングプログラム「OEM+」をゴルフ7.5Rにインストールし、パワーアップした走りを確かめた。

イギリスのフォルクスワーゲンレーシング レースプログラムを運営するとともに、フォルクスワーゲンおよびアウディ向けのチューニングパーツ「Racingline Performance Parts」を提供するRacingLine(レーシングライン)。日本では「Racingline Japan(レーシングライン・ジャパン)」が総輸入元を務めている。

今回、Racingline Japanを運営する「Adenau(アデナゥ)」にゴルフ7.5Rを持ち込み、ECUとトランスミッションプログラムをOEM+に変更する。

OEM+のECUプログラムは、純正ECUプログラムに手を加えるのではなく、同社が持つノウハウを生かしてゼロから開発を行ったもの。これにより、優れたドライバビリティと高いパワーを両立している。

Racingline PerformanceでOEM+の開発責任者を務めるBen Wardle (ベン・ウォードル)氏

Racingline PerformanceでOEM+の開発責任者を務めるBen Wardle (ベン・ウォードル)氏はこう語る

当社のOEM+ ECUソフトウェアは、最新のターボエンジンに施せる最も効果的なチューニングとなっており、私たちはその商品開発に非常にユニークなアプローチをとっています。

それは、既存のソフトウェアに手を加えるのではなく、自動車メーカー(Audi、VW)の理念を受け継ぎ、各モデル専用にゼロから設計された完全に新しいキャリブレーションを作成し、当社が販売するパフォーマンスハードウェアパーツと完璧に調和させるというものです。
私たちは過去20年間、レースで勝利を収めた競技車両へのチューニング作業を通してOEM+のECUソフトウェアを開発してきました。

その経験からいえるのは、速いクルマは常にスムーズでトルクフルな車であるということです。一方で、我々のTCUソフトウェアは、純正TCUソフトウェアに比べてスムーズな走り心地、よりスピーディなシフトチェンジ、そしてOEM+ ECUソフトウェアを使った高出力なチューンドエンジンに耐えられるようにクラッチプレッシャーを増大させます。

また、1回のアップグレードで標準状態からStage 1、Stage 2、Stage 3まで、すべてに対応することができるため、他の製品とは異なり、クルマの性能を向上させるたびにTCUのキャリブレーションを新たに行う必要はありません。これは、長年にわたってDSGギアボックスをサーキットで使用してきた当社の経験によるものです。

日本のお客様がどれほどサーキットを愛しているかを日々お聞きしており、弊社の日本総輸入元であるAdenauのような業界のリーダーとともに日本でもOEM+をご案内できることを大変うれしく思います。

日本国内にてAdenauがプロドライバーや非常にレベルの高いエンドユーザーとともに行う実走テストとフィードバックに絶大な信頼を寄せていますし、お客様からのサポートには日々感謝しております。

プログラムにはStage 1からStage 3まで3段階あり、ゴルフ7.5Rの場合、ノーマルのスペックが310ps/400Nmであるのに対し、Stage 1が370ps/471Nm、Stage 2が392ps/533Nm、Stage 3が496ps/590Nmにパワーアップ。ただし、Stageを進めるにはRacingline Performanceのハードウェアパーツを追加することが必要となるので、まずはStage 1から始めて、ステップアップするのがお勧めである。

なお、ハードウェアパーツを追加してStageを変更する場合は、施工費用以外は無料である。

持ち込んだゴルフ7.5Rは、Racingline Performanceの定番アイテムである「R600エアインテーク」をはじめとするインテークシステムが装着されており、今回はStage 1の施工をお願いした。

OEM+の施工は、「フラッシュワイヤー」と呼ばれる機器をOBDIIポートにつなぎ、これを専用アプリが入ったPCに接続して行う。

まずは車両データをRacingLineの本国サーバーに登録するとともに、OEM+の適合プログラムがあるかどうかをチェック。これにより、誤って別のプログラムが施工されることを防いでいる。

サーバーに照合すると、この車両ではStage 1からStage 3まで適合することがわかる。今回は「Stage 1 98 RON PB」を選択した。「PB」は“Pops & Bangs”の意味で、Sモードでダウンシフト時にパンパンと勇ましいサウンドを発する人気のプログラムだ。

なお、OEM+は施工後に純正の状態や他のプログラムに戻すことも可能である。

プログラムのインストール作業は約20分で完了した。

ECUプログラムのインストールとともに行いたいのが、トランスミッション(TCU)プログラムの変更だ。エンジンの出力アップにあわせて、DSGのクラッチプレッシャーを変更することで、低速域ではスムーズに、スポーツ走行などする場合には高速で繋がるようになる。しかもクラッチの保護にも役立つのだ。

トランスミッションプログラムは1種類で、Stage 1〜Stage 3のいずれにも対応する。こちらの施工は数分で完了した。

作業終了後、ゴルフ7.5Rを試乗すると、力強さを増した2.0 TSIエンジンに思わずニンマリする。

Stage 1が施工された2.0 TSIは、低回転から明らかにトルクを増した印象で、アクセルペダルに対するレスポンスが向上。大排気量エンジンを運転しているようで、実に扱いやすい仕上がり。ふだん街中を運転する場合でも、その恩恵が十分感じられる。Dレンジで運転するかぎりはシフトのマナーも良く、実に快適だ。

一方、アクセルペダルを大きく踏み込めば、全域でトルクを増したエンジンが、これまでとは段違いに速い加速を見せてくれる。ウェットの路面でも安定感が高いのは4MOTIONのおかげである。

極めつきはSレンジでのスポーティさ。エンジンのレスポンスが向上するとともに、DSGの動作も一段と素早くなって、スポーティさが際立つのだ。さらに、ダウンシフト時には特有のサウンドを発し、ドライバーの気分を盛り上げてくれる。

このように1時間足らずの作業で、安心してパフォーマンスアップが期待できるOEM+のチューニング。価格はエンジンのソフトウェアが16万5000円、トランスミッションが13万5000円と、その内容を考えるとリーズナブルだ。また、エンジンとトランスミッションのパッケージなら29万円とお得である。

ゴルフR以外のフォルクスワーゲン/アウディ車でも施工が可能となっているので、愛車のパフォーマンスアップを考えている人は、下記のOEM+施工店にぜひお問い合わせを!

※OEM+施工店は今後拡大予定

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Ohshima)

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