フォルクスワーゲンの主力モデル「ゴルフ」に、待望のTDIエンジン搭載グレードが登場。さっそく、ゴルフ ヴァリアントTDIを走らせてみた。

2018年2月にTDIエンジン搭載の「パサート」「パサート ヴァリアント」を日本に導入して以来、「ティグアン」「ゴルフ トゥーラン」「パサート オールトラック」とTDIのラインアップ強化を図ってきたフォルクスワーゲン グループ ジャパンが、ついに主力のゴルフシリーズにTDIエンジンを投入することになった。

ラインアップや価格など、今回追加となったTDIモデルについては、下記を参照のこと。

今回借り出したのは、ゴルフ ヴァリアントTDIの最上グレードとなる「ゴルフ ヴァリアントTDIハイライン マイスター」(長い名前だ)。ナビゲーションシステムのDiscover Proや液晶デジタルメーターのActive Info DIsplayなど人気機能が標準で装着され、さらにハイライン マイスターではレザーシートがおごられる。

加えて、試乗車にはオプションのプレミアムサウンドシステム“DYNAUDIO”パッケージが装着され、長距離ドライブを楽しむには打ってつけの一台である。

ゴルフ ヴァリアントに搭載される2.0 TDIエンジンは、ゴルフ トゥーランやティグアンと同じ、最高出力110kW(150ps)/3500〜4000rpm、最大トルク340Nm(34.7kgm)/1750〜3000rpmのタイプ。パサート(ヴァリアント、オールトラック含む)の140kW(190ps)/400Nm、シャランの130kW(177ps)/380Nmと比べると、もっとも控えめなスペックを持つエンジンということになる。

とはいえ、ゴルフ トゥーランやティグアンをストレスなく走らせる実力はすでに体験済みだから、力不足を心配する必要はないだろう。

それどころか、実際に走らせてみると、期待以上に軽快な加速に舌を巻く。動き出しは軽く、湿式多板クラッチ式7速DSGは、タイヤが1回転したくらいですぐに1速から2速に。2.0 TDIエンジンは1300rpmも回っていれば十分なトルクを発揮し、低回転での扱いやすさは抜群だ。

一般道では、2速こそ2000rpmオーバーまで引っ張るが、3速以上では2000rpmの手前でシフトアップし、1500rpm前後で巡航が可能だ。

TDI特有のノイズや振動については、アイドリングや低速で走行しているときには、それなりに気になるが、40km/hを超えたくらいからは高まるロードノイズにかき消され、あまり気にならなくなる。しかも、エンジンの出力を抑えているためか、パサートなどに比べると、ノイズや振動のレベルは低く感じられ、しばらく運転していると、ディーゼルであることをあまり意識しなくなる。クリアなサウンドが自慢のDYNAUDIOの音量を少し上げておけば、なおのことだ。

一方、高速道路では、7速、100km/h巡航時のエンジン回転数が1450rpmと低く抑えられることから、ガソリンエンジンよりもむしろ快適なくらいだ。追い越しなどの際も、高回転まで回さなくても十分な加速が得られるため、余裕ある運転が楽しめる。

アクセルペダルを深く踏み込むと、4000rpmを超えるくらいまで力強い加速が続くが、そこから先は加速が鈍ってくる。前述のパサートがさらに高回転まで伸びるのに比べるとやや残念だが、実用上、これで困ることはないだろう。

気になる平均燃費については、とくにエコランを心がけなくても、高速道路ではコンスタントに20km/Lオーバーをマーク。エコモードを使い、スピードを抑え気味に走ったときには、オンボードコンピューターの数字は27km/L超。一般道でもほぼ12〜13km/L以上の数字を示した。

走りに関しては、直進性は高く、コーナーではしっかりと路面を捉え、ドライバーの意図したラインをトレースするのが、なんともゴルフらしいところ。乗り心地はおおむね快適で落ち着いているが、タイヤの“あたり”が多少硬めなのが気になった。

とはいえ、文句のつけどころはそれくらいで、サイズといい、走りといい、ふだんの足として、また、長距離ドライブのパートナーとして、気持ちの良い時間をもたらしてくれるゴルフ ヴァリアントTDIハイライン マイスター。まさに、7代目ゴルフの完成形といえる仕上がりである。

(Text & photos by Satoshi Ubukata)