フォルクスワーゲンのフルタイム4WD「4MOTION」を、雪の斑尾高原で試した。

フォルクスワーゲン初の4WDは、1984年の「パサート ヴァリアント シンクロ」。ビスカスカップリングを用いたシステムで、日本では1987年に200台限定で販売された「ゴルフ シンクロ」が最初の4WDモデルとなった。

現在、日本で「4MOTION」として販売される4WDは、横置きのエンジン/ギヤボックスに電子制御油圧多板クラッチの「ハルデックスカップリング」を組み合わせたもので、スポーツモデルの「ゴルフR」「ゴルフRヴァリアント」から、4ドアクーペの「アルテオン」、クロスオーバーの「ゴルフ オールトラック」「パサート オールトラック」、SUVの「ティグアン」まで、基本的には同じシステムを採用している。

その実力を雪の特設コースや雪道で試す雪上試乗会が報道関係者向けに開催され、われわれ8speed.netも参加することができた。

スキー場の駐車場には、4MOTIONの特徴がわかる特設コースが用意された。さっそく、ラインアップのなかで最も悪路走破性の高い「ティグアン TDI 4MOTION」に乗り込む。

なお、ティグアンには、ミシュランのスタッドレスタイヤ「X-ICE XI3」が装着されている。

まずは大きく穴が掘られたコースから。下の写真では、右前に加えて、左後のタイヤが穴に落ちている。つまり、対角線上のタイヤが宙に浮いている状態だ。こういった場面では浮いているタイヤが空転し、接地しているタイヤに駆動力が伝わらないが、ティグアンでは4MOTIONとスタビリティコントロールのESCにより、軽くアクセルペダルを踏んでやるだけで、簡単に脱出することができた。

ふだんなかなか試すことができないヒルディセントアシストも体験!

下の写真の「4MOTION アクティブコントロール」でオフロード(山のマーク)を選び、30km/h以下で急な下り坂に差しかかると、アクセルペダルから足を離しても一定速度を維持してくれるというものだ。

速度は2km/hから30km/hのあいだに保たれる。この写真は、3km/hでゆっくりと雪の坂道を下っているときの様子だ。急勾配を安全に低速で下りたいという場面で重宝しそうだ。

4MOTION アクティブコントロールでは、オフロードのほかに、オンロード、スノー、オフロードカスタムが選択可能。通常はオンロードを選んでおけばいいのだが、4MOTIONが本領を発揮する雪道では、オフロードやスノーを選んだほうが走りやすい場合がある。

そこで、オンロード、オフロード、スノーに切り替えて、パイロンスラロームと定常円旋回を試してみる。

ESCが横滑りとホイールスピンを制御するオンロードモードは、大きく姿勢を乱すさずに走ることができるし、ドライバーがアクセルペダルを踏みすぎても、ESCがエンジンの出力を抑えてくれるので安心。反面、ドライバーの意志が反映されないことが多いので、雪道の運転に慣れている人にはお節介に思えるかもしれない。

その点、オフロードモードは、横滑りの制御はするが、ホイールスピンを制御するトラクションコントロールはオフになるので、ある程度の腕がある人にとってはスピードを上げて、クルマを振り回すような走り方が可能だ。

面白いのがスノーモード。オンロードモード同様、ESCが横滑りとホイールスピンを制御しているが、滑りやすい路面でアンダーステアを抑えるような制御のおかげで、オンロードモードに比べるとスムーズかつ違和感なくコーナリングできるし、そのぶんコーナリングスピードも高い。雪道では断然スノーモードが有利で、しかも運転が楽しいのだ。

試乗の後半は、パサート オールトラックで試乗会場の周囲を走る。もちろんスタッドレスタイヤが装着されており、こちらはミシュランの「X-ICE 3+」である。

4MOTIONとX-ICE 3+の組み合わせは、雪道での「走る」「曲がる」「止まる」に絶大な安心感をもたらす。発進時や加速時には4本のタイヤがエンジンのトルクを受け止め、ホイールスピンがしにくいぶんESCの介入が少ないし、コーナーから脱出する場面でアクセルペダルを踏み込んでいってもフロントが外に逃げる感じは軽い。

轍が深い場所でも、最低地上高が高いパサート オールトラックなら安心だ。確実に止まるブレーキは4MOTIONというより、スタッドレスタイヤの性能によるものだが、それを含めて、雪道のドライブが楽しいクルマだった。

雪道が好きな人には楽しさを、苦手な人には安心をもたらす4MOTION。その実力を知ってしまうと、手放せなくなるのでご注意を(笑)

(Text by Satoshi Ubukata / Photos by Hiroyuki Ohshima)