本題に入る前に、僕の愛車遍歴〜フォルクスワーゲン編を紹介しておきましょう。若い頃から「カッコいいなぁ」と憧れていたフォルクスワーゲンを初めて手に入れたのは、専門誌「Breeze」を始めた年のことです。当時、僕は編集部所有のポロ(6N前期モデル)を預かっていて、その絶妙なサイズと扱いやすいエンジンが東京の交通環境にマッチ。日常の足として文句ない存在でした。
そうなると、「遊びのクルマがほしいなぁ」と思い始めるのがいつもの癖で(笑)、せっかくだから僕をこの世界に引きずり込んだゴルフ1、でもできればカブリオレがいいなぁなあんて思いを巡らせるようになりました。そんなある日、編集部のひとりが「通勤途中の中古車屋にきれいなゴルフ1が並んでてさぁ、ついクルマを停めて見てきちゃったよ」と、少し興奮気味に話しかけてきたのです。聞けば、そのゴルフ1は83年式のCiで、オリジナルペイントのグリーンが驚くほど美しかったといいます。「あれはすぐ売れちゃうね」とも。そんな言葉に乗せられて翌日そのお店を訪ねると、聞きしに勝るきれいなゴルフ1が待ち構えているではありませんか! 案の定、その気になってしまった僕は、2日後、契約書にサイン、35歳にしてついにフォルクスワーゲンオーナーになったわけです。本当は1台のクルマとじっくり付き合いたいところですが、いろいろなフォルクスワーゲンを体験したいという気持ちから、それ以来、新旧さまざまなモデルを乗り継ぐことになります。順に挙げると、ゴルフ4ワゴンGLi、ボーラV5(後期)、ポロ(9N前期)、ゴルフ3GTI、ニュービートルカブリオレ、ゴルフトゥーランGLi(前期・青)、ゴルフ5GLi、ゴルフトゥーランGLi(前期・赤)、ポロ(6N後期)。なかには時期が重なっているものもありますが、平均すると毎年のように乗り換えていたんですね。冷静に考えると「なんておバカ!」ということになりますが、ことクルマに対しては冷静になれないのが僕らしいところなので、こればかりは諦めるしかありません(笑)。でも、おかげでいろいろな経験ができたし、フォルクスワーゲンの進化を追うことができた(時代が前後することもありましたが)のは、僕にとっては貴重な財産です。
ところで、これまで乗り継いだ10台をあらためて振り返ると、どのクルマも"いい相棒"でした。モータージャーナリストという職業柄、いろいろなクルマに乗る機会があるのですが、なかには走り出してすぐに嫌気がさしたり、あるいは「悪いクルマじゃないけど毎日乗るにはちょっと......」というのもないわけではありません。ところが、私が乗り継いだ10台は長く乗れば乗るほどその良さがわかるクルマばかり。もちろん、パーフェクトではありませんでしたが、素の状態でも十分合格点に達していたし、ちょっと手を加えるだけでさらに輝きを増すその高いポテンシャルが、僕の"カスタム心"をくすぐり続けました。
果たして、11台目のゴルフヴァリアントTSIトレンドラインとはどんな付き合いになるのか? 折りを見て報告したいと思っています。