ヨーロッパで「トゥアレグ エディションⅩ」という特別仕様車が発売されました。Ⅹはエックスではなくローマ数字の10。そう、トゥアレグ誕生10周年を記念したモデルです。



ナパレザーシートやパノラミックルーフがおごられるというトゥアレグ エディションⅩですが、正直なところこのクルマそのものにはあまり興味がなく(笑)、それよりも、デビューからもう10年が経つんだなぁと、感慨にひたる僕なのでした。


初代トゥアレグのデビューは2002年秋のパリサロン。それからしばらくしてスペインで国際試乗会が開催され、運良く試乗会に招待されました。

バルセロナ空港に着くと、すぐさま試乗車を渡され向かった先は、クルマで1時間ほどの山の中。ここにオフロードコースがあり、まずはたっぷりとオフロードの走破性を試してくれ、というフォルクスワーゲンの趣向でした。

オフロード試乗の経験は日本ではありましたが、海外はこのときが初めて。トゥアレグはフォルクスワーゲン初の本格的SUVですから、当然、フォルクスワーゲン車でオフロードを走るのも初めてのことです。しかもクルマはフェートンに次いで高価なトゥアレグ......。「ビビるなぁ」と思いつつも、高級車だから本格的なオフロードはないだろうと高をくくっていたら大間違い。実際にコースを進み始めると、トゥアレグの全幅よりも狭いルートが延々と続いていました。

道端には低い木が茂り、その枝が道にはみ出しています。どう考えてもトゥアレグのボディに当たりそうで前進するのをためらっていると、同乗していたフォルクスワーゲンのエンジニアが「試乗車だからキズなんて気にしないでくれ!」と太っ腹なアドバイス。これで少しは気が楽になりましたが、ルートそのものは山あり谷ありの難コースで、テストドライブの1時間がとても長く感じました。あまりの緊張から、エアコンの温度設定を「Lo」にしていたにもかかわらず、汗だくになったことをいまでも思い出します。


無事試乗が終わるころには、僕はすっかりトゥアレグのファンになっていました。オフロードコースからバルセロナ市内のホテルまでは移動用のヘリが用意されていました。でも、少しでも長い時間、トゥアレグに乗りたかった僕は、現地のスタッフに頼んで陸路でホテルに向かうことに。ヘリ未体験の僕としては後ろ髪を引かれる思いでしたが、トゥアレグのドライブはそれ以上に魅力的だったのです。


そんな状況ですから、僕のトゥアレグ熱は上昇する一方で、「日本で発売されたら絶対ほしい!」と結構本気モードに。しかし、結局は駐車場や懐の事情から思いは叶わず......。それだけに、2代目が登場したいまでも、初代とすれ違うとつい振り返ってしまったり......。と、個人的にはそれなりに思い入れのあるトゥアレグなのです。