今年もボクが住むトスカーナ州シエナ県で「インターナショナルVWミーティング」が7月2日から5日にかけて催された。
まず会場入口で出迎えてくれたのは色とりどりのビートルだった。ドイツの警察車、スイスの郵便配達車、メキシコのタクシー、そして同じくメキシコの警察車など、世界各国の交通・公共機関で活躍してきたビートルを再現したものだ。
ほかにも、1971年から10年間にわたってアメリカで販売されたビートル・ベースのキットカー「ブラッドレイGT」といった珍車や改造車もディスプレイされ、ビジターたちの注目を浴びていた。
グッズやパーツの屋台も覗いてみる。
そのひとつを仕切っていたマルコ・ピロヴァーノ氏は、380km離れたミラノから来場してTシャツや古いフォルクスワーゲンの広告を陳列していた。マルコ氏は1966年生まれ。普段は化粧品のプロダクトデザイナーをしている。
「ビートルは上から眺めると、長方形の中に楕円のフォルムが融合されている、極めて個性的な造形」と、クリエイターらしい視点から、その魅力を語ってくれた。
いっぽう、ドイツの「SPレーシング」社が持ち込んできたのは、初代タイプ2のフロントサスペンション換装キットだ。
関係者は「直進性を向上させると同時に、フォルクスワーゲン/アウディ純正パーツを流用したディスクブレーキと、大径のマスターシリンダーを組み合わせることで安全性も高めている」と熱く語ってくれた。
ドイツの有名な技術基準テュフにも適合していて、価格は4800ユーロ(約67万円)という。
会場にはイタリアのほか、フランス、ドイツ、スイス、ベルギー、そしてスロベニアなど周辺各国からもビートルやタイプ2を中心とするファンが集結し、車は240台・参加者数は約600人を数えた。
主催団体で副会長を務めるデボラ・カンティーニさんが面白いことを教えてくれた。
「イタリアのフォルクスワーゲンファンは、伝統的に自分の愛車に名前をつけていることが少なくないんですよ」。
参考までに、彼女のビートルは「ヴラーディ」だ。愛する父親の名前「ヴラディミール」のニックネームから拝借したものという。
彼女の夫のビートルは「グリジーノ」。ボディカラーのgrigio(グリージョ。イタリア語でグレー)に、「小さな・可愛い」を示すイタリア語の接尾詞「ino」をくっつけたものだ。イタリアらしいフォルクスワーゲンの愛し方である。
あなたも今日から自分のフォルクスワーゲンにニックネームをつけておこう。彼らに聞かれたとき困らないように。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)