「インターナショナル・フォルクスワーゲン・ミーティング」が、7月8日から10日にかけてイタリア中部シエナ県スタッジャ・セネーゼで開催された。
昨年も本欄でお伝えしたが、このイベントは元祖ビートルとその仲間たちを中心としたフォルクスワーゲンファンの集いだ。31回めの今年は、180台とおよそ400名の参加者で賑わった。
今回はルーマニアやスロベニアからの遠征組も。その中のあるグループはビートル型キャンピング・トレーラーで衆目を集めていた東欧新興国でもちょっと古いクルマ・カルチャーが着々と醸成されていることを感じさせた。
アトラクションも盛りだくさんで、クリスタルガラス工場見学やキャンティ街道ドライブなどが企画された。その傍らで、リプロダクション・パーツを駆使して組み立てたフラット4エンジンのチャリティ・オークションも行われ、売り上げ金は慈善団体ミゼリコルディア会を通じて小児科病院に寄付された。
メイン会場には2代めタイプ2のノーズが置かれ、FMラジオ局の出張スタジオとしてムードを盛り上げた。
いっぽうタイプ2の本物も屋台コーナーの一角にある。みなさん、何やってるんですか?
答えは「タトゥー」だった。
彼らは普段ミラノ郊外の店で営業しているが、イベントがあるときは水色のタイプ2で繰り出し、出張タトゥースタジオを展開しているのだという。音楽フェス会場など、夏の間は大忙しのようだ。「このイベントには初参加だよ」と教えてくれた。
ふと、そこにいたひとりの足元を見ると、可愛い初代タイプ2が彫られている。弁慶の泣き所の曲面のおかげで、ラップアラウンドしたフロントフェイスのイメージが大変良く再現されている。
フォルクスワーゲンへ愛の表現手段として、究極のかたちのひとつといえまいか。
「どうせなら歴代所有したフォルクスワーゲンをずっと彫ってゆくのも楽しいかもしれない」などと勝手な想像をしたものの、大の注射嫌いで、中学の予防接種以来針1本も体に刺したことがない筆者としては、おとなしくその場を去ったのだった。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)