■ Miniature Volkswagen

見上げると、かつての九龍城砦みたいな雑居ビルがもたれあうように聳え立っていました。香港。電話帳にあった番地を頼りに来てはみたけれど、とても「模型精品店」があるようには見えません。
ミニカー探索で身の危険を感じたことはないが、これは引き返すべきか......としばし逡巡するも、意を決し突入。鉄筋の檻みたいな恐ろしいエレベーターがゴワンゴワンと私を吊り上げます。廊下で出会う人が怪訝な目を向けてきますが気にしない。目的の53号室へ到着すると、嫌な予感は的中。ガムテープで目張りされた玄関ドア、割れた窓越しに見える段ボールの山......夜逃げ?

これまでのミニカー探しで最もディープな探査行は、あっけなく「はずれ」で終わりました。


いまや手元には数千台のVWミニカーが集っていますが、初期の頃は、ネットオークションもなかった頃ですので、手に入れるために日本のみならず、ドイツ中を探しまわったりしました。

中国でもスリランカでも、寄ってくる呼び込みのお兄さんには、お土産屋さんではなく玩具屋さんを案内してもらいました。ヴェトナムではスクーター二人乗りで数件をハシゴ、多くの収穫がありました。遠隔地の友人がフリーマケーットで確保してくれたり、メーカーの方が気を利かせてくれたり、市販のものから試作品のような珍しいものまで、vwmmは館という規模はないですが、博物室の様相を呈しております。


これも多くの方のご協力、ご好意あってのコレクションです。

ミニカーを通し、モノが集まる以上に人との出会いがあります。交渉の為に、語学力も
ほんの僅かに身につきました。どこへ向かっているのか自分でもわかりませんが、この小さきものに凝縮した愛や思想や野望?を小さく紹介してゆければと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。


◆ das kleine Golfgang(ダス クライネゴルフガング)は、ゴルフのミニカー、"Golf玩具"にまつわるコラム。1974年に実車が誕生して以来、古今東西で作られてきたゴルフのミニカーたちの小さなボディに垣間見えるストーリーを、小さく紹介しています。101回目以降、ゴルフ以外の水冷VWも紹介していきます。