その理由は、美しいフォルムを求めたから。リトラクタブルハードトップでは、ルーフを収めるトランク付近がぽっこりしたり、Aピラーの角度がきつくなったりと、デザインにしわ寄せがきてしまいます。アウディはそれを嫌いました。
また、リトラクタブルハードトップに比べてソフトトップのほうが軽量に仕上がるため、運動性能の面でもアドバンテージがあると考えたのでしょう。
一方、ソフトトップは遮音性や断熱性の面で不利といわれています。そこで、日本仕様のA5カブリオレでは、ドイツ本国ではオプションの「アコースティックソフトトップ」を標準装着して、ソフトトップの弱点を克服しようとしています。
アコースティックソフトトップは、表面に厚手のキャンバス素材を採用するとともに、中間層に 12〜15mmのウレタンフォームを挿入。さらにクローズ時の気密性を高めることで、遮音性と断熱性を向上させたといいます。
カブリオレの場合、ロールオーバー(横転)時の安全確保が課題となりますが、A5カブリオレは後席背後にポップアップ式のロールオーバーバーを配置し、横転の危険を感知すると0.25秒後にはこのロールオーバーバーを展開。強化されたAピラーとともに、乗員の生存空間を確保します。
シートにも工夫が凝らされています。レザーの表面に赤外線を反射する特殊加工を施しました。未加工のシートに比べ、炎天下では20℃も温度上昇が抑えられるといいます。
リアシートは、"プラス2"ではなく、大人ふたりが無理なく乗れるスペースが確保されているとか。分割可倒式なので、トランクに入りきらない大きな荷物にも対応できます。
ところで、乗る前からこんなことをいうのもなんですが、できれば2.0 TFSIを積むモデルをラインアップに加えてほしいのと、S4に搭載されて話題となった"リヤスポーツディファレンシャル"をぜひオプション設定してほしい! まあそれはともかく、オープンカー好きの僕としては、ぜひ試してみたいA5カブリオレです。
ソフトトップはもちろん電動式です。開閉はスイッチを押すだけで、開けるのが15秒、閉めるのが17秒という素早さ。しかも、50km/h以下なら走行中でも操作が可能です。リモコンを使うと、車外から幌の開閉ができるというのも便利ですね。
パワートレインは、3.2リッターV6エンジンと7速Sトロニックの組み合わせ。燃費はまだ公表されていませんが、6速ティプトロニックを搭載するクーペのA5 3.2 FSIクワトロより優れた値になることが予想できます。
(Text by S.Ubukata)