新型ゴルフGTIの概要についてはコチラを。
写真では見にくいが、ペダルがアルミ調になるのもGTIの特徴だ。純正ナビのRNS510はメーカーオプション。
標準のスポーツシートは、GTI伝統の赤と白のチェック模様。オプションのレザーシートを選ぶと、フロントシートに電動調節機能とシートヒーターが追加される。
"EA888"と呼ばれる新しい2.0 TSIエンジンは、ボア82.5×ストローク92.8mmこそ旧タイプと同じだが、中身は別物。たとえば、チェーンドライブの採用や、バランサーシャフトをクランクケース内に収めるなどして小型化に成功。シリンダーにガソリンを噴射するインジェクターは、1穴から5穴に噴射口を増やし、燃焼効率の向上を目指した。
中高速でのコーナリング時に、トラクションが低下した前輪内側にブレーキをかけることで、トラクション向上を図る「XDS」(電子制御式ディファレンシャルロック)は新機構。特別なハードウェアを追加するのではなく、ESPの機能を拡大することで対応している。
連続可変ダンパーの「DCC」(アダプティブシャシーコントロール)は18インチアルミホイール&タイヤとセットオプション。価格は21万円。
高速コーナーが続く試乗ルートでは、アンダーステアが顔を出すことなく、思いどおりのラインをトレースできる。
それはともかく、フルモデルチェンジにより、洗練さを増し、スポーティさにも磨きをかけた新型ゴルフGTI。もはや"ホットハッチ"と呼ぶにはクール過ぎるかもしれないが、それでも、ゴルフファンの心を熱くする一番のゴルフがGTIであることに変わりはない。
箱根で開催された試乗会では、2台の新型ゴルフGTIを乗り比べることができた。まずは、DCCなしのGTIに乗り込むことにする。運転席に着くと、ステアリングホイールをはじめ、シート、シフトブーツ、パーキングブレーキレバーに施された赤のステッチが目に入り、おのずと気分は盛り上がってくる。
時間もないので、すぐに走り出すと、エンジン、トランスミッション、サスペンションなど、すべての部分の動きに磨きがかかっていることを悟った。エンジンとDSGはスムーズさを増し、専用のスポーツサスペンションは硬めの乗り心地とはいえ、十分な快適さを誇る。静粛性が高まったこともあって、なんだか、ひとクラス上のスポーツセダンに乗っているような印象だ。
頃合いを見てアクセルペダルを踏み込んでやると、レブカウンターの針が跳ね上がり、そこから軽々と回転を上げるエンジン。カタログ上は1700〜5200rpmの広範囲で280Nmの最大トルクを発揮することになっているが、体感上は3000rpmあたりから勢いを増すように思えた。いずれにせよ、どこから踏んでも、ドライバーの期待に応えてくれるのは間違いない。
しかし、正直なところ、この状態でXDSの効果がどれほどなのかは不明(XDSが効いても、警告灯で知らせてくれるわけではない)。一方、比較的遅いコーナーの出口でアクセルペダルを踏み込むと、これまでならESPが介入するような場面で、何事もなくコーナーを抜け出すところを見ると、XDSが効き目をあらわしているのかもしれない。
そんなことを考えながら、2台目のGTIに乗り換える。こちらには、セットオプションのDCCと18インチタイヤが装着されていた。DCCには「ノーマル」「スポーツ」「コンフォート」の3モードが用意されており、まずは基本のノーマルで走り出すと、タイヤを225/40R18にインチアップしているにもかかわらず、タイヤがドタバタと暴れることがないばかりか、乗り心地は1台目よりさらに快適で、しなやかに動くサスペンションが好ましく思える。
コーナーが近づいたところでスポーツモードを選ぶと、軽いロールを伴いながら、安定した姿勢のままコーナーを駆け抜けるGTI。大雑把だが、DCCのないGTIの足まわりは、DCCのノーマルとスポーツの中間くらいのセッティングだろうか? ちなみに、コンフォートモードは荒れた舗装路などを通過するにはちょうどいいが、ふだんはノーマルに入れたままで済んでしまいそうだ。
XDSと違って(!?)DCCの効果は手に取るようにわかる。予算が許せば装着したいオプションだが、個人的には、18インチタイヤとのセットオプションでなく、DCC単独で選べたほうがうれしい。
(Text by S.Ubukata)