2.0TSIのシャシーは、DCC(アダプティブシャシーコントロール)と18インチのタイヤ&ホイールが奢られる。DCCは、ご存知のように、ノーマル、スポーツ、コンフォートの3モード。フロアコンソール、シフトレバーの前方にあるスイッチは、ノーマル状態からスイッチを押していくと、スポーツ、コンフォートと切り替わって行く。スポーツとコンフォートでは、その文字が点灯されるが、ノーマルではなにも点かない。
3モードのなかでオールマイティなのは、もちろんノーマル。18インチ・タイヤ&ホイールの重さを時に感じさせはするもの、概ねハンドリングと乗り心地のバランスはよく、街中からワインディングまで十分満足できる乗り味を示す。コンフォートでは、まるで扁平率の高いタイヤを装着しているような柔らかさを示す。といっても、同乗者が悪酔いするような、締まりのないソフトさではなく、ちゃんと腰を感じさせるものではある。最も気になるスポーツは、一気に減衰力が高まって、電動パワーステアリングのアシスト量も減少して操舵に手応えが出る。大幅に俊敏性が高められるものの、乗り心地はほぼ完璧に無視される形で、角のある段差では、235/40というサイズの太く、扁平率の低いタイヤであることも実感させられる。ワインディング専用、もっといえば、サーキット専用とまでいいたくなるような足。こんなに割り切ったセッティングが許されるのも、減衰力の切り替えできるゆえといえるだろう。まさに、DCCの恩恵というヤツだ。
シロッコの2モデルを乗り比べ、それぞれをキャラを探ってみると、2.0TSIは、この表現が正しいかどうか分からないが、どちらかといえば"ダンナ仕様"で、、ただのTSIこそがシロッコ本来のスポーツクーペという感じがする。ただのTSIの場合、硬めのコンベンショナルなサスペンションのためか、室内にビリビリした耳障りな音が聞こえることもあって、静粛性も含めた快適性では、DCCを装備する2.0TSIのほうが優れるといえるだろう。ザックリいって、簡単に速さを手に入れられるのも2.0TSI。ただ、ワインディングを飛ばした後の達成感は、圧倒的にただのTSIのほうが強いことも確かなのである。性能面で優位な立場にあるのは、もちろん馬力のある2.0TSIだが、ただのTSIも侮りがたい存在。硬派ではあるが、ハンドリング、さらに燃費などを加味すると、現代のスポーツクーペとしての総合評価では、むしろただのTSIのほうが高いようにも思われる。