アウディ ジャパンが打った朝刊の全面広告には驚きました。というのも、その内容が、フランクフルトショーに出品されたコンセプトカー「e-tron」でしたから!

ではいったいe-tronってどんなクルマ?

簡潔に表現すると、e-tronは電気仕掛けのスーパースポーツ。R8よりもわずかに小さなボディに4つのモーターとバッテリーを搭載し、最高速200km/h(リミッター作動)と248kmの航続距離を誇ります。
アウディらしいのは、各ホイールをそれぞれ別々のモーターが駆動することで、フルタイム4WDのquattroを実現するところ。これだけは譲れないんですね。

プレスリリースによれば、e-tronのボディサイズは全長4.26×全幅1.90×全高1.23m、ホイールベースが2.60mと、R8より少しだけ小さく、一方、車両重量は1600kgで、R8 4.2に比べて約40kg重くなっています。ただ、470kg、42.4kWhのリチウムイオンバッテリーをキャビン背後に搭載していることを考えると、電気自動車化に伴う重量増はかなり少ないほうでしょう。R8同様のASF(アウディ スペースフレーム)やシンプルな電気自動車の構造が、重量増の抑制に効いているのだと思われます。 

前後重量配分は42:58で、このあたりもミッドシップエンジンのR8に近いバランスになっています。これを考慮して、通常は前30:後70のバランスで駆動力を発揮します。もちろん、走行状況に応じて各ホイールの駆動力を調整。各モーターを個別にコントロールできるので、スポーツディファレンシャルがなくても、アンダーステアやオーバーステアを解消できるのは"電気quattro"のメリットといえます。

こんな話がアウディだと現実的に思えてしまうのは、これまでアウディがいろいろな電気自動車の実験車をつくってきたこと、そして、quattroの実績があるからだと思います。

ただし、ひとつだけ納得できないのがe-tronのスペック。4個のモーターによる最高出力は230kW(313ps)。これはいいとして、最大トルクの4500Nm!というのは......?? これで0-100km/h加速のデータが4.8秒というのは遅くない? ちなみにR8 4.2は最大トルク430Nmで0-100km/h加速は4.6秒。タイヤのグリップが足りない? 最大トルクは4500Nmだけど、リチウムイオンバッテリーからの電力供給が追いつかない? そもそも4500Nmという数字が誤り? 理由はどうあれ、これは謎です(笑)もう少し早く気づいていたら、ショー会場で確認できたのに......。

コンセプトカーだけに、つっこむのはこれくらいにしておきますが、将来、ルマンやGTカーレースにこんなクルマが出てきたら面白そう......あと10年もしたら、常識になっているかもしれませんけどね。 

(Text by S.Ubukata)