さて、ここのサイトには当然フォルクスワーゲンファン、ゴルフファンの皆さんがお集まりのはずですが、ゴルフというクルマが日本で毎年何台くらい売れているかご存じでしょうか?
すぐいっちゃいますけど、だいたい2万5000台前後です。
これがどのくらいの数字かという、わかりやすい国産車でいえば、「スバル・レガシィ」くらいです。よくレガシィは輸入車、もっといえばゴルフと競合するといわれるクルマですが、本当に毎年いい勝負しているんです。
レガシィに関して特に新しいニュースは聞かれないのですが、スバルは14年頭に「レヴォーグ」という新規モデルを追加しますから、来年はレガシィ、レヴォーグ連合軍とゴルフがいい勝負を繰り広げるのでしょう。来年早々にはゴルフにも新しいモデルが追加されるようですから、争いはますます激化するかも。
レガシィの2万5000台前後はそのクルマがもつ日本での実力を反映してのことですが、ゴルフの2万5000台前後はそうともいい切れません。なぜなら店舗数が異なるからです。フォルクスワーゲンは輸入車ブランドのなかでは最も多い部類に入る約250店舗をもちますが、それでもスバルの約500店舗の半分くらいです。
新車の販売台数は、もちろんクルマの良し悪しも影響しますが、店舗数、あるいはセールスパーソンの数に左右される部分も小さくありません。いいクルマでも店の数が少なければたくさん売れないし、ボロいクルマでも店の数が多ければそれなりに売れるのです。当たり前といえば当たり前のことですが、味気ない事実でもあります。
フォルクスワーゲンの店舗数が仮に約500店舗あったなら、ゴルフはもっと売れるはずです。ただし、販売コストも増加するので、インポーターやディーラーにとってハッピーかどうかはまた別の話。ちょうどいいのが現在の店舗数と販売台数なのでしょう。そう考えると、販売台数というのは人気のクルマかどうかをはかるひとつの目安でしかないことがわかりますね。
◆2018年に11万台!?
それはそうと、フォルクスワーゲン本社の鼻息も荒いんです。フォルクスワーゲンはグローバルで5年後の2018年に販売台数1100万台を突破させたいという目標を立てています。それにともない、フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)も同じ年に販売台数を11万台にのせる計画を立てています。
11万台とはすごい数字で、今年これだけ調子のよいVGJの今年の販売台数は6万台半ばといわれています。となると、毎年1万台ずつ増やしていかないと18年に11万台には到達しません。
到達してもようやく世界の1%に過ぎないという点には日本人として寂しいものを感じますが、それはともかく、年間11万台とはどういう数字か、別の例を挙げますと、ここ数年のスバル全体の国内販売台数と肩を並べる数字です。マツダには少し届かない程度。もしもスバルやマツダよりもフォルクスワーゲンのほうが売れているという時代がきたら、輸入車は、少なくともフォルクスワーゲンはもう特別なブランドではなくなります。
田舎へ行っても「輸入車お断わり」という十把一絡げにガイシャを排除する駐車場も減るでしょう。ワイドショーで犯人が「高級外車を乗り回」す機会も減るかもしれません。欧米諸国のように国産車のシェアが半分強程度だったら、日本の景色は違ったものになるでしょうか。
過去〜現在の日本市場のように、国産車の比率が諸外国ではあり得ないくらいに高い、輸入車のシェアがひと桁パーセントしかない状態がよいのか悪いのかは、僕にはわかりません。僕もそのひとりですが、欧米のクルマが好きな人にとっては悲劇です。
が、国民におけるそういう人々のシェアこそひと桁パーセントもいいところでしょうから、全体を見れば国産車が強いというのは国が一生懸命国内産業を保護してきた結果であり、それによって日本が豊かになったのは紛れもない事実なので、よいことだったのかもしれません。要するに、よい悪いではなく、国民がそっちを選択したということです。
今年のフォルクスワーゲンについてまとめてほしいという編集部からの依頼で書き始めたのに、気づけば話が広がりすぎて迷子になりそうですが、2013年のフォルクスワーゲンの快進撃は後年思い出される出来事でしょうし、その象徴としてゴルフが日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したということでしょう。
18年までに11万台規模に......というのはなかなか難しい目標でしょうが、フォルクスワーゲン日本にはもっともっと日本でたくさんクルマを売っていただき、現在はレガシィと並んでランキング30位に入る程度のゴルフが、トップ10にランクインするような時代にしていただきたいものです。
そうなれば、輸入車がフォルクスワーゲンだけが売れるというのも考えにくいので、いろんな輸入車が増え、東名阪だけでなく日本全国で当たり前に見られるようになり、楽しそうじゃないですか。
(Text by S.Shiomi)