もちろん、ICE(エンジン車)でも120%買えない価格のクルマもあるわけですが、なぜかEVとなると途端に心がパタンと閉じ、職業的関心のみで向き合う感じになるのです。
なので、2014年の個人的1台は、e-up!ではなくゴルフ・バリアントにさせていただきます。そりゃゴルフですからよくできています。走りにも装備にも不満はありません。頑張れば手が届く価格も魅力的です。そうした優等生的魅力に加え、バリアントのラゲッジスペースのとんでもない広さに心を奪われてしまったのです。
スポーツのゴルフが好きなんですが、キャディバッグってクルマにとって実にやっかいな荷物です。一番長いドライバーというクラブの場合、長いもので約120cmあります。そのドライバーにヘッドカバーをかけたものをバッグに収めると、およそ130cmくらいの長さの荷物となります。これをラゲッジスペースにキレイに収められるクルマはそう多くありません。
それでも多くの日本車はキャディバッグのことを考慮し、ラゲッジスペースの左右部分がえぐられているので、すっぽり収まるモデルが結構あるのですが、輸入車は、キャディバッグではなくスーツケースの積載を想定し、左右よりも奥行きを優先してスクエアな形状をよしとしているので、キャディバッグがすっぽり入るクルマは相当大きいモデルに限られます。
その点、ゴルフ・バリアントは輸入車には珍しく左右幅が十分確保されていて、リアシートを倒さずともキャディバッグを入れることができます。余裕で3個入ります。トノカバーを外し、後方視界をいくらか遮ってよいのであれば4個入れることもできるはずです。ことラゲッジスペースの形状と容量に限れば、ゴルフ・バリアントはBMW3/5シリーズ・ツーリングやアウディA4/A6アバントよりも優れています。
バリアントにかぎらず、モデルチェンジの度にプレミアムの領域へ......なんていわれますが、FWDのメリットを活かした広大なラゲッジスペースなどといった実直なクルマづくりこそ、ゴルフの本質的な魅力だと思うんです。
下手なプレミアム・ブランドより高品質ですが、それはあくまで余興で、実用車としての本分を忘れてはいません。そこに敬意を表し、2014年の個人的に1台とさせていただきます。
車名のゴルフの由来はスポーツのゴルフとは関係なく、ガルフストリームからとっていますが、ゴルフがゴルフに適したクルマであることは間違いありません。
(Text by S.Shiomi)