本物志向のMQBユーザーが待ち望んでいた高性能サスペンションセット「ザックスパフォーマンスコイルオーバー(通称RS-1)」。ドイツのメジャーサスペンションブランドの「ビルシュタイン」や「KW」がすでにラインナップする中、ザックスが満を持してリリースしたこの製品をゴルフGTIに装着して緊急試乗した。
いつもの
ステアリングを握る前にザックス担当者から新製品のハイライトを伺うと......

(1)フロント側はほぼ前モデルのPQ35とほぼ同等のデザインで、ストローク量が約25mm増している。リア側はダンパー長がPQ35用に比べ50mm長く、ストロークも約40mm増した。

(2)リアダンパー伸び側の減衰が作動初期より大きく立ち上がる設計に。

(3)内蔵するパーツがすべてレース用ダンパー基準に変更。通称第二世代。

ちなみにタイヤはミシュランPS3、ホイルはOZスーパーツリズモLM025(マニアックススタジアム限定モデル)、そしてサスペンションがザックス......この組み合わせはWRCで活躍するポロR WRCと同じで、フォルクスワーゲンユーザーにとって、ある意味"三種の神器"かもしれない。
そんな情報を頭の隅に置きながら、車体の動きを確認しつつ第三京浜を経て、横浜新道から西湘バイパスへ。連続するアスファルトの段差を比較的速い速度で乗り越える際も、感覚的にはほぼノーマル同等の体感振動ではあるものの、サスペンションが縮む→反発で伸びるといったダンパーのレスポンスが心地よい。

サスペンションを最大限稼働させながら、キャビンをフラットに保とうとする減衰のチューニングは、速度に比例せず、つまりタイヤが動いた瞬間の微速度からESC制御ギリギリのワインディング走行までまったく変わることがなかった。どこまで攻めても破綻しない。ESCの介入時の挙動もいたって自然である。

今回の試乗では、残念ながら性能限界の入り口にすら辿り着くことはできなかったが、MQBシャーシのポテンシャルをひとつもスポイルすることなく引き上げるような性能感覚は、ザックスパフォーマンスコイルオーバーの持つ"真の性能"だと実感。

前モデル(PQ35用)の評判同様、微速域~高速まで快適。そこからさらに高負荷のレスポンスにも対応したザックスパフォーマンスコイルオーバーサスペンションセット。奥深い高性能は邪魔にはならないと感じた。


試乗後に頭に浮かんだのは機械式の時計。1秒を正確に刻む精密金属部品の集合体が紡ぎだす時間には、特別の価値がある。ザックスパフォーマンスコイルオーバーも、1/100秒毎の不規則な振動を的確なレートとストロークでドライバーとクルマの要求に応える。

機械式腕時計のムーブメントに相当するダンパー制御バルブ&構成パーツは、F1技術を担保するザックスご自慢の超高精度。1セットずつドイツ人レースエンジニアの手によって組み立てられる逸品だ。

機械式ザックスパフォーマンスコイルオーバーの心地よさを感じながらドライブすること、それは、ドライバーにとって特別な時間といっても過言ではないだろう。