それは、3列シート・7人乗りのSUV「アトラス」が公開されるからだった。MQBプラットフォーム上につくられたボディの全長×全幅は5037×1979mmで、アメリカ工場製フォルクスワーゲンとしては史上最大のモデルだ。
エンジンは2L4気筒直噴ターボTSI 238psと、3.6L"VR6" 280psの2種で、いずれも変速機は8段ATが組み合わされる。また、3.6L版では、4Motionと呼ばれる4WDも選択できる。
室内に目を移せば、デジタルコクピットの"アクティブインフォディスプレイ"がさっそくドライバーを迎えてくれる。
すでにゴルフに装着されている、起きてしまった事故を最小限に留めるポストコリジョンブレーキシステムも、クラスで初めて搭載されている。
会場のプレゼンテーションでは、バスケットボール・チーム「ロサンゼルス・レイカーズ」の元選手ジェームズ・ウォージー(左から2人め)とカリーム・アブドゥル=ジャバー(左から3人め)両氏がアトラスに乗って登場。長身の彼らが車から降り立つことで、広大な室内スペースを印象づけた。ちなみに、フォルクスワーゲン オブ アメリカは、レイカーズが運営する少年健全育成財団への3万ドルの寄付も表明した。
ところで、今回のLAでは、日本ブランドも7人乗りのコンセプトカーを公開するなど、多人数乗りへのシフトが明らかになった。
フォルクスワーゲンの関係者は、筆者の質問に対し「とくに米国大都市における(UBERなどに代表される)配車サービスや、相乗り通勤=カープーリングが今後より普及することが予想されるため」と説明する。
これは、前述の日本ブランドの幹部からも同様の返答を得たので、明らかなトレンドといえる。
会場では、EV仕様「e-ゴルフ」の2017年モデルも発表。こちらは航続距離を83マイル(約133km)から124マイル(約198km)へと向上させた。出力・トルクとも向上。またDCチャージングシステム搭載車の場合、僅か1時間で80%の充電が可能となった。
さらなる話題は、パサートGTコンセプトだ。こちらは280HP TSIエンジン+6段DSGを組み合わせたうえ、ゴルフGTIをモティーフにロ−ダウンサスペンションやスポーツエグゾーストなど内外20箇所に手を入れたものだ。
フォルクスワーゲン オブ アメリカによる独自企画で、「史上最もアグレッシヴなパサート」に仕上がっているという。
シェアリング社会に対応すると同時に、こうしたハイパフォーマンス・バージョンの追加も今回のLAで主要メーカーがみせた傾向であり、フォルクスワーゲンはいずれもしっかりと掴んだかたちだ。
また、会場コンコースには、2011年に米国で始まった「レッドブル・グローバル・ラリークロス」で、2015-2016年の2期連続で年間ドライバーズ・チャンピオンとなったフォルクスワーゲンビートルも展示された。
実は、フォルクスワーゲンのオフィシャル展示以外にも、ちょっと気になる1台があった.
「GARAGE」と称するチューナーやドレスアップショップが主役を務めるパビリオンで発見したものである。
その名は「ゼレクトロリック・バグ」。サンディエゴをベースとするゼレクトリック・モーターズ社が手がける製品だ。要は初代ビートルやカルマン・ギアをEV化したものである。
特筆すべきは、改造にあたって、オリジナルのボディを切断したり、溶接することなしにEVユニットに換装している点だ。かつて初代ビートルといえば、ファンの間で、フラット4エンジンを車体から降ろしたり、ふたたび載せたりする時間を競うゲームがあったものだ。
「このEVビートルなら、そのタイムはさらに短縮できるので?」などと空想を広げた筆者であった。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)