世界最大級のエレクトロニクス・家電見本市「CES 2017」が2017年1月4日から8日まで米国ラスベガスで開催された。
昨年に続き、今年もフォルクスワーゲンはブースを開設。2016年パリで公開されたEVコンセプトカー「I.D.」はここでも人気で、クルマと自撮りをする来場者が絶えなかった。


今回フォルクスワーゲンブースのテーマは「We are always on」である。

第一のコンセプト展示は、2スクリーンとヘッドアップディスプレイで構成された「デジタルコクピット」だ。


アイトラッキング技術は、今ドライバーが車内のどこを見ているかを認識し、ディスプレイ内にその瞬間に必要な情報のみを必要な位置に表示する。


エアコンの温度調節スライドパネルには、作動フィードバックを指に感じさせる、一部スマートフォンのようなハプティクス・タッチが採用されている。実際、指をスライドさせてみると「ぶるぶるっ」と手に感触が伝わってきた。

ダッシュボードを大型ディスプレイが占める時代になっても、「こうしたデバイスによって、運転中の視線移動を減らせるのです」とスタッフは説明する。


もうひとつ公開されたのは、「Volkswagen ユーザーID」と、そのアプリである。

将来このIDを取得して、一度自分のフォルクスワーゲン車でシートポジションやエアコンの温度、果てはデジタル・ダッシュボードの配色を決定すると、デジタル・プラットフォーム「フォルクスワーゲン・エコシステム」を通じて、他のフォルクスワーゲン車に乗り換えた場合もそれらが適応される。それは、フォルクスワーゲンを用いたカーシェアリング車両の場合も同じという。

ちょうどアップルのユーザーが"Apple ID"によって、MacでもiPhoneでも各種設定を引き継げるのと同じ要領である。


また、アプリを入れたスマートフォンはデジタルキーになり、特定の人や特定の時間にアクセス権を付与することができる。そのため家族や友達に車を貸すときも便利になる。さらに宅配配達員にコードを送信し、車を宅配ボックスがわりにすることも可能だ。

海外メディアが関係者の話として報じたところによると、システムは2020年デビュー予定のフォルクスワーゲン製EV「I.D.」から採用されるという。

会場では、アマゾンが販売している家庭用音声認識デバイス「エコー」と、そのヴァーチャル女性音声アシスタント「アレクサ」を使ったコネクティビティ構想も紹介された。

家庭をイメージした小部屋で、1回あたり最大3〜4名の熱烈プレゼンテーションである。


エコー+フォルクスワーゲンの使用法は無限だ。

たとえば花を買いたい場合「アレクサ、近くのフラワーショップはどこかフォルクスワーゲンに聞いて」と筒型のエコー本体に声をかけると、ガレージに駐車中のフォルクスワーゲンのカーナビにルートが自動インプットされる。

さらに「アレクサ、ガソリンまだ入ってるか、フォルクスワーゲンに聞いておいて」と話しかけて、もし燃料残量が少ない場合スタンドへのルートもナビに自動的に追加される。

ショッピングも可能だ。スタッフが筆者に実演してくれたのは「ワイパー」の購入である。エコーに「アレクサ、フォルクスワーゲンにワイパーを買わせて」と話しかけると、家庭内のディスプレイに、アマゾン・ショッピングサイト内の車両に適合したワイパーがたちまち表示された。


「また、家で聴きかけた音楽の残り部分を、車内で自動的に再生することも可能です」とスタッフは説明してくれた。ということは、逆に車→家の音楽聴き続けも可能だろう。

東京の会社員時代、たわいもない流行歌のカセットテープを社用車に置き忘れて赤っ恥をかいた筆者だが、クラウド時代のフォルクスワーゲンにそうした失敗は皆無なのだろう。


それはともかく、フォルクスワーゲンと意思疎通ができる時代がまもなくやってくる。やがてフォルクスワーゲンファンなら誰もが知る名作映画「ラブバッグ」に登場する初代ビートル「ハービー」のように、時折すねたり、怒ったりすることで逆に愛着を沸かせるAIが搭載されるのではないか?

今から想像を逞しくする筆者である。

(文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真=Akio Lorenzo OYA,Volkswagen)