フォルクスワーゲンは2017年4月21〜28日に一般公開された第17回上海モーターショーに出展した。
前回の2015年同様、合弁先である上海汽車(上汽:SAIC)が、中国第一汽車(一汽:FAW)それぞれのブースで出展するかたちがとられた。

しかし、プレスデイのブリーフィングは一緒で、スローガンも共通の「We make the future real 」だった。


フォルクスワーゲンの中国販売は好調である。フォルクスワーゲン・チャイナのDr.シュテファン・ヴェーレンシュタインCEOが明らかにところによれば、昨2016年には約300万台を販売した。また、2017年の国内調査では「消費者に支持される自動車ブランド」でナンバーワンに輝いた。

上汽とは2017年中に、完全中国生産のフルEVを投入する。一汽とは今後18カ月に9モデルのSUV/クロスオーバーを投入。うち3台は、完全な新型の予定だ。

そして、これまで果たしてきた「中国における近代的モビリティ」の担い手としての役割をさらに発展させ、「EV、コネクテッドカー、そして自動運転の時代も、引き続き中国で先導役を果たしてゆく」と宣言した。加えてヴェーレンシュタイン氏によると、2019年にすべてのフォルクスワーゲン車はコネクティビティを有し、中国はそれに関してもっとも重要なマーケットとなる。

今回ショーにおけるワールドプレミアは3台だ。

最初はC-トレック「バウンドレス・エディション」である。


C-トレックとは、上汽が2016年から製造しているワゴンで、中国用セダンモデル「ボーラ」をベースにしている。クロスオーバー市場では最も多い販売台数を誇る。

それを基本に、パノラミックルーフをはじめ、より個性的な要素を盛り込んだものである。中国の若年層に対するアプローチだ。


2台目は「フィデオン・プラグインハイブリッド(PHEV)」である。フィデオンとは2016年北京ショーで発表されたSAICが手がける中国市場用最高級セダンで、今回の車はそのPHEV版である。

ハイブリッド・システムのパワーは180kW/500Nmで、EVモードでの走行距離は50km、PHEVでの航続距離は847kmである。


参考までに昨今、上海郊外の新築集合住宅では、充電ステーションがセリングポイントのひとつとなっている。また環境汚染対策のため、日本でいうエコカーに対するナンバープレート交付優先などの各種優遇施策が導入されている。それらを背景に、中国のPHEV市場の展望は明るい。

そして3台目は今回のスターである「I.D.Crozz」である。


この自動運転機能を備えたEVに関しては、すでに本サイトの他ページで紹介されているのでそちらに譲る。他のショーで公開された2台のI.D.シリーズ同様、ステアリングパッド上のVWマークに3秒手を当てると、自動運転モードに切り変わる。


フォルクスワーゲンデザインのクラウス・ビショッフ部長は、「フォルクスワーゲンは移動の定義を変える」と宣言。新しい時代もフォルクスワーゲンが中国の自動車市場を引き続きリードしてゆくことを示唆した。


いっぽう初日の閉館間際、ふたたび訪れてみると、まだプレスブリーフィングに出席したフォルクスワーゲン首脳陣の氏名が印刷された紙が椅子に貼られたまま放置されていた。このゆるさが中国らしい。


いっぽうプレスデイ2日目夕方にもういちど覗いてみると、今度はブリーフィングに登場したダンサーとおぼしき若者たちが記念撮影に興じていた。会場担当者の許可のもととはいえ、これまたゆるくて楽しい。

ちなみに、一般的にコンセプトカーはかなりデリケートな造りだ。メーカーによっては、シートが確実に固定していないものさえある。

対して、若者たちはI.D.クロスにあたかも普通の車のように乗り、ポーズなどきめている。


心配になった筆者がそばにいた担当者にきけば、「きちんと造られているから心配ない」と涼しい顔で答えた。フォルクスワーゲンクオリティは、コンセプトカーでも手を抜かない。


(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)