アウディAGは、ジェネーブショーで小型電気自動車のコンセプト「A1 e-tron」を披露する。



ジェネーブショーがワールドプレミアとなる「アウディA1」。アウディは、その電気自動車版である「A1 e-tron」を同時に披露する。

A1 e-tronは大都市内の移動を目的とした小型の電気自動車だ。コンパクトなサイズながら、大人4人が乗れる室内スペースを確保。都市内の効率的な移動を可能とする。
ボンネット下には定格出力61ps、最高出力102psの同期モーターを搭載。トルクは定格で150Nm、最大で240Nmと、ガソリンエンジンなら2L超級の実力を誇る。変速機は持たず、前輪を駆動。モーター上部には駆動用のインバーターが収まる。
電気エネルギーを貯えるリチウムイオンバッテリーは、 フロアトンネルおよびリアアクスル前にT字型に配置される。およそ150kgのバッテリーは12kWhの容量を誇り、満充電ならバッテリーだけで50kmの走行が可能だ。バッテリーだけで走行する場合は、もちろん"ゼロエミッション"だ。


注目はラゲッジルームの床下に積む"レンジエクステンダー"。レンジエクステンダーとは電気自動車に搭載する発電用のエンジンのことで、航続距離を伸ばす役割を担う。

レンジエクステンダーを積むこと自体、とくに新しいやり方ではない。では何が新しいのか? アウディがレンジエクステンダーに採用したのが、ヴァンケルエンジン、つまり、ロータリーエンジンなのだ。ロータリーエンジンといえば、かつてアウディが傘下におさめたNSUがロータリーエンジン搭載モデルを販売しているが、いまや市販車に搭載するのは日本のマツダだけ。自動車用のエンジンとしては成功を収めているとはいいがたいが、小型で高出力が得られることから、レンジエクステンダー用にはひそかに有望視されていた。

A1 e-tronでは、254ccのシングルローターエンジンを採用。5000rpmの一定速で作動させることで非常に高い効率を実現する。エンジン本体に、発電機、吸排気システムなどを加えた重量は70kgで、出力は15kW。このシステムにより、航続距離は200km伸びるというから、A1 e-tron総航続距離は250kmということになる。

アウディにゆかりのあるロータリーエンジンをレンジエクステンダーに用いたA1 e-tron。電気自動車がロータリーエンジンを復活させるというのが実に興味深い。実はアウディ以外にもこのような動きが見られ、ロータリーエンジンの搭載がこれからのトレンドになる可能性は高い。

(Text by S.Ubukara)