● 57km まで純粋な電動モードで走行可能
● トータルの走行可能距離は約900km





<ウォルフスブルグ/ベルリン、2011年6月28日>
フォルクスワーゲンは「エレクトリックモビリティの共同研究」のために最新世代のゴルフ ヴァリアント ツインドライブを20台製作しました。さらにそのフリートテストにおいて、ツインドライブ車の燃費評価などを正確に行えるよう、従来型の内燃機関を積んだゴルフ ヴァリアントも8 台用意して提供しています。

電気モーターがメイン
ゴルフ ヴァリアント ツインドライブのプラグインハイブリッドによるドライブ機構は、外部からの充電ポートを持たない一般的なハイブリッドシステムとは、根本的な部分で異なっています。第一に、より大きなバッテリー容量(最大13.3kW/h)のおかげで、ツインドライブのパワートレインは、とりわけ市街地を中心とした利用において、純粋な電動モードでも長い走行距離を実現しています(最大57km)。第二に、プラグイン タイプではないハイブリッド車においては、電気モーターは内燃エンジンの補足的な役割を果たすだけですが、ツインドライブではその逆に、電気モーターがメインで、内燃(ガソリン)エンジンはその補助的役割を果たすという構成になっています。

とりわけ市街地走行や短距離の移動においては、電気モーターが65kW/88PS のパワーを発揮して、中心的ドライブユニットとして働きます。そして、それ以上のパワーが求められたときにはガソリンエンジンも始動して、クルマの動力性能を高めてくれるのです。

ガソリンエンジンはまた、外気温が低い状況において、電気による暖房機構をサポートする役割も果たします。

中距離から長距離のドライブにおいては、高度な判断機能を備えたハイブリッドのマネージメントシステムが、電気モーターとガソリンエンジンの負荷の分担比率を、燃料消費量が最小になるように自動調整します。そのプロセスにおいて、車両の主となる制御システムは、その時のルートや状況に対応して、電気モーターと内燃エンジンがもっとも効率のいい形で協調して作動できるよう、最適な運転モードを常に選択していきます。ただし、バッテリーが充分に充電されていれば、例えば市街地においてゼロエミッションで走行するために、ドライバーの意思で純粋な電動走行モード(Eモード)を選択することも可能です。エネルギー回生(ブレーキング)もしくはコースティング(無負荷走行)中は、電気モーターだけが稼働します。専用のクラッチによりガソリンエンジンは駆動システムから分離されて、機械抵抗による減速は最小に調整されます。その結果、Eモードでの走行中、およびアクセルペダルからドライバーが足を離したときのエネルギー消費は削減され、ゴルフ ヴァリアント ツインドライブは、慣性力を利用してより長く遠くまで走ることができるようになりました。

一定の条件の下では、Eモードでも57kmの航続距離が得られ、ガソリンエンジンの助けを借りれば、その距離は約900kmにまで伸びます。車両の緻密なエネルギーマネージメントと、無線ナビゲーションシステムを通じての革新的な情報提供システムのおかげで、ゴルフ ヴァリアント ツインドライブは、市街地においてはなるべくゼロエミッションのEモードで走行するよう、ドライバーが事前にプログラムすることも可能です。たとえば、ライプチヒからベルリンまで移動するとして、出発地だけでなく目的地の市街地においても、プログラムにより自動的にEモードを選択して走行することができます。その場合、ドライバーはEモードでの走行を「予約」することで、それに必要なバッテリー容量が自動的に確保され、その結果ドライバーは、目的地付近でE モードボタンを押すだけで、純粋な電動ドライブが選択できるようになるのです。

ドライブシステムの構成
電気モーターの最高出力は85kWで、静止状態から最大600Nmのトルクを発揮することができます。最新世代のゴルフ ヴァリアント ツインドライブに搭載されているTSI エンジン(過給器付きの直噴ガソリンユニットで最高出力は同じく85kw/115PS)との組み合わせでは、最高120kW/163PS のパワーを発生して、力強い加速を実現しています。

ドライブユニット全体はエンジンルームのなかに収められており、燃費効率に優れた1.4 リッターTSI エンジン、ジェネレーター(30kW/250Nm)、電気モーター、TSI エンジンと電気モーターの間に置かれた電動式の分離クラッチ、および1 速のトランスミッションで構成されています。電気エネルギーの流れは、バッテリー同様に車両後部に置かれた高圧電力分配ユニットが主に制御しており、さらに別個のDC/DC コンバータ ーが、12V の車載電装品に必要な電力を供給する役割を果たしています。

きわめてエネルギー効率に優れたテクノロジーの組み合わせ
前述のとおり、このテクノロジーの組み合わせは、きわめてエネルギー効率に優れています。プラグインハイブリッド車の燃料消費量を測定する指針に従えば、ゴルフ ヴァリアント ツインドライブは、じつに2.1リットル/100km、1リッターあたりでは48km(CO2 排出量に換算して49g/km)という素晴らしい燃料効率を実現しています。バッテリーがフルに充電されている場合には、なるべく電力を活用するよう制御プログラムが組まれており、長距離をドライブする場合にだけ、ガソリンを消費する割合が増える仕組みになっています。その結果、ほとんどの運転条件において、燃料消費量は従来型のクルマを大きく下回っています。

プラグインハイブリッド車として、ゴルフ ヴァリアント ツインドライブは、非常に俊敏な運動性能を備えたモデルということができるでしょう。最高速度は170km/h に達し、0~100km/h 加速も12秒以内に完了します。ちなみに、純粋な電動モードでも、ゴルフ ヴァリアント ツインドライブは、120km/h の最高速度を誇っています。

ゴルフ ヴァリアント ツインドライブには、以下の3 つの制御モードが設定されていますが、その選択は走行条件やバッテリーの充電状況に対応して、自動的に行われるようになっています。

・電動モード(Eドライブ):バッテリーからの電力をもとに電気モーターのみで駆動するモードです。TSIエン ジンは停止して、分離クラッチにより電気モーター/ドライブトレインから切り離されています。電気モーターだけでも最大65kWのパワーが発揮されますから、日常的な走行において、ドライバーはほとんど不満を感じることはありません。ジェネレーターの駆動やバッテリーチャージのために動力がさらに必要な場合には、TSI エンジンが即座に始動することになります。

・内燃エンジン連結モード(電気モーター+TSIエンジン):時速50km以上の速度で走行する場合など、内燃エンジンを車両の駆動に活用するときは、分離クラッチがつながって、TSIユニットが直接ドライブトレインと締結されます。高速での長距離走行などでは、内燃エンジンの特性を生かした効率的な運転が行わ れます。力強い加速が求められたときには、バッテリーからエネルギーを得た電気モーターとTSIエンジンの両方がパワーを発揮します(ブースティング)。必要であればいつでも、ジェネレーターが働いてバッテリーの再充電が行われます。

・バッテリー充電モード(電気モーターのみ稼働):運転中車両にブレーキをかけると、電気モーターが(この場合はジェネレーターとして働いて)クルマの慣性エネルギーを電気に変換し、それによりバッテリーの充電を行います。その場合、TSIユニットは停止して、分離クラッチによりドライブトレインから切り離されます。意図したコースティング(惰性走行)の場合にも、同じことが行われます。

この3 つの制御モードには、ゴルフ ヴァリアント ツインドライブの基本的なコンセプトが反映されています。それは、市街地などの短距離ドライブは純粋な電動で行う一方、長距離ドライブでは効率的なパラレルハイブリッドを選択するというものです。

ツインドライブに採用された2 タイプのバッテリーシステム
プラグインハイブリッドシステムについていえば、フォルクスワーゲンは、今回のゴルフ ヴァリアント ツインドライブにおいて、2つの異なるリチウムイオンバッテリーシステムの検討を行っています。20台用意された車両のうち10台には、ドイツ/米国の電池メーカー、GAIA社製のバッテリー(電極タイプ:NCA)を採用し、残る10台には、ドイツのボッシュと韓国のサムスンの合弁会社であるSB LiMotive 社製のバッテリー(電極タイプ:NMC)を搭載しているのです。後者の10台については、今年の初めからテストに供されています。どちらのバッテリーシステムも、高いパワー/エネルギー密度を誇り、重量も150kg前後とほぼ同じです。

そのうちGAIA社製のバッテリー(電圧302V、セル毎の通常の容量は37A/h)は86のセルで構成され、電力容量は11.2kW/hとなっています。それに対してSB LiMotive社製のバッテリー(同315V、42A/h)は84セルで13.2kW/hの電力を供給可能です。これを別のモデルと比較すると、純粋な電気ドライブを採用したコンセプトカー、ゴルフ ブルーe モーションのバッテリー容量は26.5kW/hで、市販モデルのトゥアレグ ハイブリッドのそれは1.7kW/hとなっています。ゴルフ ヴァリアント ツインドライブのバッテリーの冷却は、フォルクスワーゲンがSB LiMotive社製のバッテリーを積んだクルマのために開発したバッテリーマネージメント&モニタリングシステム(BMS)によって行われています。

インテリジェントな充電管理システム
双方向での操作が可能な「インテリジェント」充電ステーションを介して、革新的な充電管理の仕組みが、実現しようとしています。ドライバーが次の出発時間や、Eモードでの希望走行距離といった情報をインプットすると、自動的に判断して適切な時間に充電を開始します。そうしたパラメーター(判断のもとになる情報)は、無線ナビゲーションシステムを介してインプットすることも可能で、電力会社とデータを交換することで、充電が安く、かつ再生可能エネルギーにより行われるよう、チャージングマネージャー(充電を制御する電子ユニット)が充電プロセスの設定を自動的に行います。また、一度充電した電気を戻すといったことも可能で、その場合車載のバッテリーは、巨大な電力ネットワークの小さな構成要素として、一時的な電力需要のピークに対応する役割を果たすことになります。このシステムにより得られるのは、交流(AC、230V、3kW)電源です。

充電機能しか持ち得ない一般的な充電ステーション(例えばガレージの家庭用コンセントなど)で得られるのは交流電源です。交流電源だと、フル充電に最大5時間かかってしまいます。そこで3つめの選択肢として、直流電源(DC、230~400V、30kW)を供給する急速充電器を使えば充電時間はわずか20分になります。今回の共同研究では、これら3つの充電方式ともに検討と分析の対象になっています。

データの収集と保管
分析という点では、非常に多くの情報が収集・保管されています。走行中のデータは、データロガー(車載コンピューター)によって常時記録され、GPSによる走行地点のコードとともに、UMTSのモバイル無線コネクションを介して、オンラインサーバーに転送されています。フォルクスワーゲンの研究チームは、プロジェクトパートナー各社もアクセスできるように、それらのデータの予備解析を行っています。

(フォルクスワーゲン グループ ジャパン プレスリリース)