ウブカタ(以下ウブ):ひょっとして、まだ立ち直っていないんですか?
太田:それどころか、悔しさが日に日に増しているくらいだよ。
ウブ:相当ショックだったんですね......。
太田:そりゃそうだよ。
ウブ:相手が悪かったんですよ。GTIだって、相手がRじゃなければ十分に早いんですから。それに、Rより軽いぶん走りに軽快感があって、運転が楽しいじゃないですか。
太田:そこに惚れてGTIを手に入れたのは事実だよ。走りには満足していたから、少し華やかな雰囲気にしようと思って始めたのがGTIの"イタ車"化。
ウブ:打倒フェラーリ......でしたよね?
太田:そこまで大それちゃいないけどさ。もしフェラーリがゴルフをつくったらどんなクルマに仕上げるんだろうと思って、スポーティでラグジュアリーなGTIを目指していたんだ。
ウブ:ステアリングホイールとかアームレストとか、ドイツ車の発想じゃないカスタマイズが新鮮でいいですよね!
太田:GTIのカスタマイズというと、どうしてもスパルタンで少しヤンチャなイメージになってしまいがちだからね。
ウブ:そこに一石を投じたという意味では、太田さんのGTIはカスタマイズの歴史に新たなページを刻む一台になるはずですよ。
太田:それは大げさだよ......というのはいいとして、実はいまカスタマイズの方向性で悩んでいるんだ。
ウブ:原因はゴルフRなんですか?
太田:そのとおり。スパタイGPの話に戻るけど、事前の予想では、希望的観測もこめて、GTIはRといいとこ勝負だった。確かにRはGTIよりパワーはあるけど、4WDだからそのぶん重い。だから差し引きゼロだろうと。
ウブ:でも、現実はRに差をつけられてしまったわけですね。
太田:もちろん、これからもエモーショナルで安全で楽しいGTIに仕上げていくつもりだけど、やはり速さも追求したくなったんだ。
ウブ:レーシングドライバーの血が騒ぐんですね(笑)
太田:そういうわけじゃないけど......。
ウブ:でも、いいじゃないですか。GTIはそういうクルマですよ。スポーティにもラグジュアリーにも進化させることのできる、カスタムのベースには格好のモデルですから。
太田:そうだよねぇ。よし、決めた!
ウブ:ここで、「ゴルフRに乗り換える!」とかいわないでくださいよ(笑)
太田:もちろんだよ。"打倒ゴルフR"に方針変更!
ウブ:打倒フェラーリの次は打倒ゴルフRですか! 大胆なコンセプトですが、何か作戦はあるんですか?
太田:実はストリート用のダウンサスの開発に着手していたし、エンジンのチューニングもいろいろと探っていたんだ。そういったものを積み重ねていけば、打倒ゴルフRも夢じゃない!
ウブ:これは面白くなってきた。スパタイGPでの対決が楽しみですね。
太田:「待ってろ、R!」ということで、WR(=Wait, R)プロジェクト、本日スタート!
ウブ:そこまで考えていたんですか......。
第9話に続く
(Text by T.Ota & S.Ubukata)