チューニングというのは、結局、いい意味で"イタチごっこ"のようなもので、きりがないといえばきりがない。



ある分野がよくなれば、「次はここをよくすれば、もっとよくなる」と考え、ついそれを実行してしまうものだ。オグラは、ビルシュタインのクラブマンパック装着でハンドリングが大きく改善されたことを実感すると、「ならば、エンジンをパワーアップしちゃえば、もっと速くなるはず」と、コックスのカスタマーセンター(0465-81-3034)に"SZチューニング"に依頼してしまうのだ。

SZチューニングでは、3のGTIの場合、ステージⅠからⅢまでのチューニングプログラムが用意される。オグラがセレクトしたのは、最高峰のステージⅢだ。ヘッドのオーバーホールはもちろん、ポートもモディファイ、カムシャフトをシュリック製の260゜に、バルブスプリングを強化タイプに、ガスケットをメタルガスケットにして圧縮比を上げるなど、一通りのことが行なわれ、そのうえでコンピュータ・チューニングの"BPR"が加わる。料金については、コックスのホームページを見て欲しいが、経済的に余裕のあるオジサンを気取っているにしても、これはかなりの投資。しかし、ここでいっておきたいのは、そのコストパフォーマンスは全然悪くない、むしろきわめて高いということだ。

オグラのGTIのエンジンはすでに14万㎞近く走行しているにもかかわらず、コンディションはちゃんと保たれていて、事前のパワーチェックでは156.2psを出していた。それが、SZチューニング・ステージⅢが施されることによって、15.8psプラスの172psをマークするようになる! 驚いたのは、そのパワー感だけではなく、扱いやすさが増し、そしてなにより官能性が大きく高まったことだ。なにしろ、吹け上がりが素晴らしく、ギュイーンと伸びていく気持ちよさはノーマルの比ではない。ポート加工、それに燃焼室の容積のばらつきをなくすといった緻密な作業、レーシングエンジンさながらの行程が、こうした回転上昇のスムーズさを生み出しているわけだが、その官能性を一度でも味わったなら、もう病みつき。意味もなく、フル加速を楽しむようになったりする。サーキットでの走りがより楽しくなり、おかげでラップタイムも少なからず削り取れた。

こうなってくると、気になるのはミッションおよびデフだ。デフは3.6のギア比はそのままながら、すでにコックス製のリミテッドを装着していて、それなりに満足していたのだが、エンジン性能がSZチューニングでグッと向上したことから、「ファイナルを落とせば、もっと速くなる」と思い始めた。そういえば、3のGTIのミッションは、2速と3速が離れすぎで、3速に入れた途端、加速が鈍る印象がある。ならば、ファイナルを3.9に落とし、3速のローギアード化してしまえば、問題は解消されると、大阪・茨木のラインハート(072-621-1100)にその作業を依頼したのだ。ラインハートの吉本さんは、サーキットに行くまでの高速道路走行を考慮、燃費と静粛性をアップさせることができる5速の大幅なハイギアードも薦めてくれ、それも合わせて実施することに。結果は、予想以上のものだった。デフのローギアード化、2速と3速のクロス化で、我が3のGTIは俄然加速性能が高まり、もちろん、幾ばくかはラップタイムを短縮することができたのだ。

その後も、地道なチューニングは続いている。

エンジン関連では、エキゾーストシステムをコックス製のチタン胴体マフラーに交換したが、これも効果あり。抜けがよくなったようで、回転上昇がよりいっそう鋭くなったニュアンス。音色がよくなったことも見逃せない。ブレーキ関連では、前後のパッドをサスペンション関連では、コックスがレース用として発売していたフロントのスタビライザーを装着。ストリート用の中空タイプとは違って、中実タイプとなるこのスタビは男前。ロールが少なくなって、コーナリング時の安定感が増した。オクヤマ(045-934-5334)が開発したロワバー、またセンター、リアのフレームブレースを装着してみて改めて考えさせられたのは、ボディ剛性の重要性。とりわけ、センターとリアのフレームブレースは考えられてはいても製品化まで至ったのは、おそらくこれが初めて。剛性アップは確かなもので、これでまたハンドリングがより素直な方向に、鋭くなった印象を得た。

とまあ、大体こういう流れでオグラは懲りもせずチューニングを続けてきたわけだ。正直にいって、経済的に余裕のあるオジサンを演じるのはかなりつらかったが、それでも一つ一つのチューニングで得られたクルマの変化は非常に興味深いものだった。いささかコストがかかりすぎかもしれないが、クルマ好きの趣味としてはきっとまだまだカワイイものだろう。そう思うことにしている・・・。

しかし、オグラはこのところ、現在の仕様では限界に来たように感じていて、さらなるチューニングを検討中だ。そのあたりは、またいずれ報告してみたい。