ゴルフ1や2のオーナー氏に、いや、すべての旧いフォルクスワーゲン車オーナー諸氏に告ぐ! そう簡単には、愛車を手放すな! もっともっと大切にして、長く長く乗っていけ! いま、この日本でも'70年代から'80年代のクルマが持つ魅力が再認識されつつある。"ヤングクラシックス"、あるいは"ヤングタイマー"という考え方の、ひとつのムーブメントが生まれようとしているからだ。
■自動車文化先進国では当たり前?

"ヤングクラシックス"、あるいは"ヤングタイマー"という表現で、'70年代、'80年代のクルマをひとつにくくる方法があると知ったのは、昨年9月。フランクフルト・ショーの前に、シュツットガルトのメルセデス・ベンツ・ミュージアムを訪ねた時だ。エントランスフロアの下、ブティックやレストランのあるフロアに、きれいにリフレッシュされた'70年代のコンパクト・メルセデスが展示されていた。その上に、Young Classics の文字。ヤングとクラシックという相反する単語が並んでいることに違和感を覚え、ミュージアムのスタッフに「これはナニ?」と問うと、「クラシックとかヴィンテージというほどは古くはない、'70年代から'80年代のクルマを意味します」とのこと。すでにこの年代のクルマには根強い支持があり、今後さらに広がりを得る可能性があるという。

その人気が確かなものであることを知ったのは、ずばり"ヤングタイマー"という名の雑誌をアウトバーンのサービスエリアで発見した時。コンビニのような売店で、普通の自動車雑誌と一緒に並んでいた。ということは、少なくともドイツではちょっと昔のクルマを所有して楽しむ、それを趣味とする生活がごく一般的になっていることの、いわば証し。さすがに、自動車文化先進国なのである。

我が意を得たり、だった。ともあれ、この年代のクルマには、様々な魅力がある。そのなかで一番大きいのは、現代のクルマには希薄な、自らが運転しているという感覚が得られることではないだろうか。ややメンテナンスに気を遣わせられるものの、まだ実用に耐えて日常的に使えるレベルにあるということも見逃せない。もっと旧いクルマに比較すれば負担は軽く、気楽にエンスー気分が味わえるということだ。もちろん、クルマに接する度に、そのクルマが現役だった時代に想いを馳せることができる。ノスタルジーに浸ることもできるのだ。また、そうしたクルマは、オーナーの精神的、そして、そこそこ経済的にも余裕があることも示して、ことクルマに関しては"美味しい生活"を送っていることを伺わせもする。オーナーのライフスタイルを表す記号でもある。

■ビッグバンパーをスモールバンパーに

余談になってしまうが、こういう流れもあって、オグラは手持ちの'91モデルのゴルフ2 GTIを少しだけ古い'88や'89モデルのようにして、"ヤングクラシックス"を装うことにした。以前からなんとなくキープしていたパーツがそれを可能にしたわけだが、ビッグバンパーを持ち、サイドシルにカバーを付ける'91モデルを、スモールバンパーのサイドシルカバーなしにしたら、どう見えるのかに興味があった。自分でもバカなヤツだと思いつつ、ついやってしまった。


それで分かったのは、ビッグバンパーの後期GTIがスモールバンパーの初期GTIよりスポーティな印象を与えるのは、前後の大型化されたバンパーで視覚的重心が下がり、サイドシルの厚い樹脂製カバーがウェストラインまでの幅を厚くし、相対的にキャビン部を薄く小さく見せる効果を得ているため。「So What?(それで?)」と聞かれると、なんとも答えようがないのだが......。


GTIやGTスペシャルなどのビッグバンパー装着車をお持ちのオーナー氏でこんなことをやろうとする人は少ないと思うが、念のためお伝えしておくと、こうしたスモールバンパー化は、あまりオススメしない。まず、パーツがなかなか揃わないこともその理由のひとつだが、予想以上にコストがかかるからだ。サイドプロテクションモールやオーバーフェンダーを外してみると、塗装面に長く接着していたための筋、キズが出てきて、それはおそらく塗装をしなければ直らない深いキズであることが多い。実際、オグラは塗装のためにかなりの出費を強いられた。トホホ、だった。

■目先の利益に惑わされるな!

このところ、エコカー購入補助金なるものが気になっている。初年度登録(検査)年月日から13年経過した自動車を廃車にして、「平成22年度燃費基準」達成車に買い換えの場合適用されるという、25万円の補助金だ。決して少なくはない金額だから、ゴルフ1や2のオーナー氏は少なからず心動かされているものと思う。だが、この制度を使って、長年付き合ってきたゴルフ1や2を手放すのは、絶対に思いとどまって欲しい。もう少ししたら、"ヤングクラシックス"、"ヤングタイマー"という考え方が日本でも根付き、1や2もただの古くなった輸入車という見方ではなく、ひとつの文化遺産と捉えられて大切に扱われる存在になると思われるからだ。