この春、同氏のプロフェッショナルぶりに改めて驚いてもいた。どういうことかというと・・・
ご存知のように、
ジウジアーロとイタルデザインは、環境問題が大きくクローズアップされる前から、都市部のモビリティマネージメントに関しては数々の提言をしてきている。たとえば、'92年のトリノショーには、"BIGA"というコンセプトカーで、近未来のシティカーの在り方を示した。ほぼ立方体というべきボディ(全長約2m)ながら、ドライバー以外は対面して座らせるという方法で、無理のない4名乗車を実現していた。基本は、電池でモーターを駆動する電気自動車だが、充電用に小型のディーゼルエンジンを搭載してもいた。
しかし、このクルマで最も重要だったのは、都市部のフリートユースに向けての新しい考え方。数カ所にターミナルのようなものを設置し、そこでクルマを借り、あるいは乗り捨てできるようなシステムの構築を、行政、自治体に提言していたことだ。そのために、クレジットカードを差し込めば誰でも使えるようにするなど、使い勝手も考慮していた。要するに、いま一部で事業化が進められているカーシェアリングだ。
憶測にとどまるが、VWは、イタルデザインのこうした部分、そしてもちろん、小型
車のデザインに秀でているところに、魅力を感じたのではないだろうか。
■あおりを受けるのはイタリア国民?
イタルデザインがVW傘下となって、一番困るのはフィアットだろう。歴史を振り返れば、フィアットが不振から抜け出す契機となるのは、常にジウジアーロ・デザインのニューモデル。ウーノやプントは、その典型的な例だ。なにしろ、ジウジアーロはどんなに小さなクルマではあっても、どこかに気品といったものを漂わせるのがうまい。一時期、フィアットは自社デザインにこだわったが、その間、ヒット作は生まれなかったように思う。グランデプントで息を吹き返したが、それはイタルデザインのアイデアだった。
考えてみれば、ジウジアーロはイタリア国民にとっては恋人のような存在かもしれない。イタリア国民は、その大事な恋人を奪われたことになる・・・
イタルデザインがVW傘下となって、一番困るのはフィアットだろう。歴史を振り返れば、フィアットが不振から抜け出す契機となるのは、常にジウジアーロ・デザインのニューモデル。ウーノやプントは、その典型的な例だ。なにしろ、ジウジアーロはどんなに小さなクルマではあっても、どこかに気品といったものを漂わせるのがうまい。一時期、フィアットは自社デザインにこだわったが、その間、ヒット作は生まれなかったように思う。グランデプントで息を吹き返したが、それはイタルデザインのアイデアだった。
考えてみれば、ジウジアーロはイタリア国民にとっては恋人のような存在かもしれない。イタリア国民は、その大事な恋人を奪われたことになる・・・
■初代マーチの謎が解けた
新型マーチでジウジアーロを思い出したというのは、こういうことだ。初代マーチのオリジナルスケッチは、やはりジウジアーロのものだったことが、この春の、あるアルファロメオのミーティングでハッキリして、謎が解けたような気分になっていたためだ。ニッサンとの提携で生まれたアルファロメオ・アルナの、ニッサン側の担当だったエンジニア氏が、「もう時効だからいいでしょう。初代マーチのデザインはジウジアーロのものです」と教えてくれたのだ。ウーノによく似ていたものの、リアウ インドーの傾斜角が大きいなど、もうひとつ合理的でなかったのは、ニッサン側がまだ保守的だった日本のマーケットに合わせて変更したためとも聞かされた。ジウジアーロのデザインと推測しながら、確信までに至らなかったのにはそうしたことからだったのだ。
新型マーチでジウジアーロを思い出したというのは、こういうことだ。初代マーチのオリジナルスケッチは、やはりジウジアーロのものだったことが、この春の、あるアルファロメオのミーティングでハッキリして、謎が解けたような気分になっていたためだ。ニッサンとの提携で生まれたアルファロメオ・アルナの、ニッサン側の担当だったエンジニア氏が、「もう時効だからいいでしょう。初代マーチのデザインはジウジアーロのものです」と教えてくれたのだ。ウーノによく似ていたものの、リアウ インドーの傾斜角が大きいなど、もうひとつ合理的でなかったのは、ニッサン側がまだ保守的だった日本のマーケットに合わせて変更したためとも聞かされた。ジウジアーロのデザインと推測しながら、確信までに至らなかったのにはそうしたことからだったのだ。
オグラはトリノに出向いて、イタルデザインを訪ね、ジウジアーロにインタビューしたことが何度かある。そんな機会に、「ところで、初代マーチは貴方のデザイン?」と聞いたことがある。ジウジアーロは首を横に振って、「ノー」という答。そして、ようやく今年の春、謎が解けた。ニッサンがイタルデザインから初代マーチのデザインを買う契約において、ジウジアーロがオリジナルを描いたとは公表しないという項目があったそうで、彼は見事にその契約を守っていたことになる。改めて、オグラはジウジアーロのプロフェッショナルぶりに感心し、驚いたというわけだ。