ようやくというべきか、ゴルフ6のGTIもチューニングのベースとなり得るクルマとなったようだ。業界筋によれば、近い将来、最大の問題であったXDS (電子制御式ディファレンシャルロック)の機能を解除できるキャンセラーが用意されるとのことなのだ。
■ 高度電子制御がもたらしたもの

 ゴルフ6のGTIは、これまでのGTI同様、大いに脚光をあびてデビューした。新世代のE888シリーズの一員となるエンジンが従来のE113シリーズよりも11psアップされていたことや、ボディが少なからず軽量化されていたことから、ポテンシャルの高さは明白といえて、チューニングを楽しむ向きはそのベースになるマシンとして注目したわけだ。

ところが、実際に6のGTIを購入した人達の間では賛否両論が起こった。大部分の人は、5のGTIよりも軽く緻密に回るエンジンや、DCC(アダプティブシャシーコントロール)がもたらす乗り心地のよさを評価し、満足度の高いクルマとして位置づけた。が、一方で、サーキット走行までも楽しむユーザー間では、6のGTIの高度な電子制御がスポーツドライビングを阻害している部分がないでもないとの不満が出た。

ワインディングで繰り返しスポーツドライビングを楽しんだり、サーキット走行を続けると、6の電子制御が安定を取り戻そうとするコントロールを始め、介入してもまだ不安定な姿勢が続く場合は、ワーニングをした後、安全のためにエンジン回転の上昇を妨げたりする。DSGも、油温の上昇が続けば、シフトのスピードを遅くしたりのコントロールが入る。そんななかで最も大きな問題とされたのが、XDSだ。

中高速のコーナリング中、駆動輪の荷重が減少した時にすぐに作動するこのシステムは、コーナーのイン側の駆動輪の荷重が不足しているとセンサーが感知した場合、その駆動輪にブレーキをかけて空転を事前に防止する。トラクションを確保することで、コーナリング中のスタビリティを確保すると同時にアンダーステアを軽減、俊敏なハンドリングを実現するというものだ。実際、このシステムは実に有効。特に緊張するでもなく、中高速のコーナリングが楽しめてしまう。

だが、サーキット走行においては、コイツがより速いコーナリングスピードの獲得を妨げる。というか、XDSが働くことで駆動輪のブレーキ温度が熱くなりすぎて、ブレーキ性能が低下してしまう。ドライバーとしては、6のGTIのポテンシャルの高さが分かるだけに、極端なことをいえば「XDSさえなければ」と思う。XDSのキャンセルができないため、たとえば、より大容量のブレーキを装着するとかのモディファイも不可能ということになって、チューニングのベースとしては不適格という烙印を押されることになったわけだ。

業界筋によれば、その問題のXDSのキャンセラーがまもなく登場するだろうとのこと。6のGTIの素材としての素性のよさが、これでようやく活かせるということになる。

■ キャンセルすることから始まる

これまでXDSがなるべく顔を出さないように、色々な方法が考えられてきた。たとえば、リミテッドスリップデフとしてトルセンを装着する、あるいはボディダンパーを装着するなどの対処法が生まれていた。しかし、いずれにしても、XDSのシステム自体をキャンセルするわけではないので、完全な問題解決にはならなかった。もっとも、この状態に留めて、XDSを適度に働くようにしておくのがベターとの考え方もあるのだが。

6のGTIが登場してまもなく、DCCのキャンセラーが販売された。可変ダンパーの減衰力を切り替えるためのコントロールユニットをキャンセルしなければ、車高調整式サスペンションが装着できなかったのが、この装置の生まれた背景。まあこんな風に、現代の高度に電子制御化されたクルマのチューニングというのは、システムを働かせないようにする、キャンセルすることから始まる。

時間はかかったが、XDSにもキャンセラーが出そうだ。これは朗報だ。