前回、業界筋からの情報として、XDS(電子制御式ディファレンシャルロック)の機能を解除できるキャンセラーがまもなく用意される見込みとお伝えした。その後、さらに取材を続けていくと、どうやらXDSのキャンセルはVWのテスターでできるらしいことが分かってきた。つまり、ユニットとして、キャンセラーが登場するわけではないということだ。
■コーディングでオッケー!

キャンセラーが登場すると記したのには、理由がある。まず、これまでの業界の話として、ドイツ本国から伝わってきた「XDSはどうやっても絶対に外せない」という情報がある。新たにキャンセラーでも開発しない限り、その機能を解除するのは無理と思われた。また、DCC(アダプティブシャシーコントロール)のキャンセラーのように、ユニットとして開発されない限り、業界のビジネスにはなりにくいと考えられたこともある。

しかし、実際には、XDSはVWの整備部門が持つテスターでキャンセルが可能だった。いわゆるコーディングでXDSを呼び出し、アクティブとなっているのをオフにすれば、それでキャンセルできるとのこと。最新のテスターを持っていれば、特別なことをするでもなく、キャンセルできるのだ。

XDSのキャンセルでなにができるのか。一番のメリットは、ドライバーにそのテクニックあるとの前提に立ってのことだが、コーナリングスピードを上げられることだろう。ともあれ、XDSによるイン側のブレーキの引きずりをなくすことができるからだ。イン側のブレーキだけが熱を持って、やがて使えなくなるという現象はなくなるはず。
チューニングの可能性は大きく広がる。ブレーキの容量を大きくすることができ、よりスポーツドライビングを楽しめるようになる。XDSを装備するのはゴルフ6のGTIだけではないことも、覚えておくべき。ゴルフRやシロッコRなどにも、様々な可能性が出てくる。車種的な広がりが生まれてくるわけだ。

■もう少し時間が必要?

とはいえ、このXDSのキャンセルの是非は、もう少し時間をかけたほうがいいかもしれない。というのは、XDSのキャンセルで他の機能に影響が出るかもしれず、それまだ十分に検証されたとはいえないため。XDSは、コーナリング中のスタビリティを確保するという機能だけではなく、ディファレンシャルやミッション、クラッチなどドライブトレーン系の保護という意味合いもあるとも推測されるからだ。