A: 「車高の低いクルマはカッコ良く見える。」確かにそうですね。私もそう思います。当社のデモカーはもちろんですが、他のショップのデモカーや雑誌に登場するユーザーズカー、サーキットを走っているレーシングカー等、車高が低くカッコ良く見えます。速いクルマ=車高が低い=カッコいいという構図ですね。ドレスアップにおいてもチューニングにおいても車高の高いクルマは見たことがありません。そう考えると、車高を低くするメリットの方が大きく見えてしまいます。
しかし、実際は、車高を落とした時の影響を心配される方の「声」を多く聞きます。これからサスペンションを変更してみたいけど、「実際のところは何が良くて何が悪いの?」と思っている方がたくさんいるかと思います。サスペンションの内容は結構難しいのですが、是非ここは多くの方にイメージだけでも理解していただきたいところでもあるので、サスペンションの一般論をおりまぜながらご説明させて下さい。
まず、メリットは先にも例を挙げたように、カッコ良いということですね。車高を落として、大型のアルミホイールを履くと、ノーマルの車とは見栄えも迫力も段違いです。また、サーキットを走っている車もノーマルよりも速く走れるということこれもメリットだと思います。
但し、構造を良く分からずに闇雲に車高を落としてしまうと、速くなんて走れないし、カッコ良いドレスアップカーもまともに走れません。車高を下げるとそうなってしまう可能性があるということがデメリットなんです。では、そのデメリットとは何なのかを説明したいと思います。
サスペンションメカニズムや運動性能を解説している本などを良く読むと、実は車高を下げることにメリットは殆どないことが分かります。「えっ?良く分からない」と思われるでしょうね。そう、サスペンションの話しは複雑怪奇なんです。では、車高を下げるとどんなことが起こるかというと、「乗り心地の悪化」と「操縦性の悪化」です。これでは益々分からなくなってしまいますよね。当然「何で?」と思われると思います。巷ではサスペンションキットが豊富に販売されているのに?という素朴な疑問が湧いています。このことについては最後に触れるとして、「乗り心地の悪化」と「操縦性の悪化」が起こる理由を先に説明します。
サスペンションというのは、いろいろな部品から成り立っています。スプリング、ショックアブソーバー、ボディと連結しているアーム類、スタビライザー等で構成されています。サスペンションの役割は路面からの衝撃を吸収したり、コーナリング中に発生するロールや荷重変化に対応するように上下に動く構造となっています。
では車高を下げるとどんな問題が起こるのかということですが、サスペンションアームの位置が変わってしまうことにより様々な影響を及ぼすことになるんです。
クルマには重心があります。そしてサスペンションは上下にストロークしますが、実際にはサスペンションアームの支点を介して回転運動をしています。先ほど、車高を下げるとサスペンションアームの位置が変わると言いましたが、サスペンションアームの角度が変わると、ロールセンターという位置が低くなるんです。これは目で見えるものではありませんが、フロント、リヤそれぞれに存在します。このロールセンターという点を前後で結んだラインをロール軸と言って、クルマはこの軸を中心にロールをするんです。ロールセンターが低くなりロール軸が下がるとクルマの車高も低くなるので重心も低くなりますが、ロール軸の変化の方が大きくなります。それによりロールモーメントの足(重心とロール軸の距離)が長くなりロール軸に作用する力が大きくなることでロール剛性が低下するのです。
では車高を下げるとどんな問題が起こるのかということですが、サスペンションアームの位置が変わってしまうことにより様々な影響を及ぼすことになるんです。
ロール剛性が低下すると、クルマはよりロールが大きくなり、サスペンションは上下に大きく動くようになります。車高を下げたことにより、ショックアブソーバーの縮み側のストロークも減少しているのでバンプラバーへの接触も早まり、突き上げを起こすことになります。
このように単に車高を落とすと構造的なデメリットが多くなります。では、サーキットを走っているレースカーはどうなっているの?という疑問が生じますよね。レースカー等の場合、今説明した用件を考慮して克服しているんです。どういうことかというと、見た目は低くなっていますが、サスペンションアームの位置が適正で、クルマの重心も低く作っています。つまりロールモーメントの足が短いのでロール剛性が高くなります。それにスプリングもバネレートも高いものに変更され、ショックアブソーバーも減衰力特性やストローク量を変更しています。同時にスタビライザーも強化するなどサスペンションの構造や走行の目的にあったものに変更されているのです。
市販車の場合は、レースカーのように都合よく構造を変更できませんね。先ほど巷で販売されているサスペンションキットについて触れましたが、各サスペンションメーカーは当然、車高を下げることにより生じるデメリットを理解した上で設計しています。車種ごとに計算してスプリングレートを高くしたり、ショックアブソーバーの減衰力特性やストロークを変更しています。ですから、サスペンションキットは車種専用品なんですね。こういった理由で、サスペンションキットや車高調整式のサスペンションに変更すると、どうしても純正のサスペンションよりは硬い方向になる傾向がありますが、ショックアブソーバーの特性によっては感じ方も様々なので、数値的には硬くても純正より乗り心地がよく感じられるものもあります。
市販車の場合は、レースカーのように都合よく構造を変更できませんね。先ほど巷で販売されているサスペンションキットについて触れましたが、各サスペンションメーカーは当然、車高を下げることにより生じるデメリットを理解した上で設計しています。車種ごとに計算してスプリングレートを高くしたり、ショックアブソーバーの減衰力特性やストロークを変更しています。ですから、サスペンションキットは車種専用品なんですね。こういった理由で、サスペンションキットや車高調整式のサスペンションに変更すると、どうしても純正のサスペンションよりは硬い方向になる傾向がありますが、ショックアブソーバーの特性によっては感じ方も様々なので、数値的には硬くても純正より乗り心地がよく感じられるものもあります。
「ダウンスプリングのみで車高を下げるとどうなりますか?」又は、「純正ショックアブソーバーとの相性はどうなりますか?」という質問をされることがあります。この質問についても同じように考えることが出来ます。スプリングメーカーも純正よりバネレートを上げることで、ロール剛性の低下を防ぐようにしています。純正のショックアブソーバーと併用する場合の問題は、バンプタッチまでのストローク量と減衰力の特性です。理屈で言えば悪い話しになりますが、構造的に致命的な問題がない限り最終的にはオーナーの方の判断になります。つまり、不快に感じなければそれはそれで、その方には合っていると考えてもいいと思います。
最後に。お堅い一般論でサスペンションの説明をしてしまうと、上記のような話しになってしまますが、メリット、デメリットの感じ方は人それぞれです。ローダウンしてスタイリッシュになった愛車を見るとデメリットを感じなくなる可能性もありますし、逆に強く感じる可能性もあります。ご自分の趣味嗜好、クルマの使い方などを元に、ノウハウを持ったショップに相談して、決めることでより楽しいカーライフを送ることが出来ると思いますよ。
お悩みの方は是非、自分に合ったサスペンションを探しにショップへと足を運んでみてください。