横浜みなとみらい地区をベースに開催された試乗会で垣間見たポロの素顔とは?
すでに、フランクフルトショーの会場や日本の発表会場で、フルモデルチェンジして5代目に生まれ変わったポロに触れる機会はあったものの、ステアリングを握るのはこれが初めてだから、少し興奮気味に試乗会に臨んだ僕。自身、3代目の6N型前期と後期、そして、4代目の9N型前期を愛用していたこともあり、ゴルフと同じくらい、ポロには思い入れがあるのだ。
あらためてその姿を眺めると、少し大きくなったとはいえ、いまだに4mを切るコンパクトな5ナンバーボディが街並みに溶け込み、「いいサイズだよなぁ」と、しばらく見とれてしまった。デザインはシロッコやゴルフ6に通じるシャープなフロントマスクが、ポロに新鮮なイメージを与えている一方、6Nや9Nにはひと目でポロとわかるユニークさがあったことを思うと、一転して小さなゴルフへの道を突き進みはじめたことに、元ポロユーザーとしてはどこか寂しい思いがした。
エクステリア同様、インテリアでも"ゴルフ化"が進み、シンプルですっきり、そのうえ、センタークラスターまわりに上質さが漂うインパネは、ゴルフから乗り換えてもまるで違和感がない。
メーターパネルには、飾り気のない大径アナログメーターがふたつならび、その間に各種情報を美しく表示するディスプレイが配置された。
残念なのがステアリングで、本革巻きじゃないことが、ポロの上質な雰囲気に水を差している。
そんな人にはこのポロ1.4コンフォートラインは魅力的なコンパクトカーであるに違いないし、買ってハズスこともまずないだろう。欲をいえば、エンジンに新しさがほしいところで、走りの質にこだわるなら、1.2 TSI搭載のポロを待つという手もアリだろう。
エントリーモデルといえ200万円を超えるのだから、なんとかならなかったのだろうか? そんなことを考えながら、さっそく試乗会場から街へ飛び出した。試乗したのは、ポロ1.4コンフォートライン。ご存じのように、新型導入後しばらくのあいだ、ポロのバリエーションは1.4Lエンジン搭載のこのグレードだけで、2010年以降に「スポーツライン」「GTI」「クロスポロ」といったグレードが追加されるという。ということは、1.2リッター直噴ターボ(TSI)はスポーツラインに搭載されるということだろうか?
それはさておき、いまステアリングを握っているポロ1.4コンフォートラインは、旧型と同じ排気量のエンジンを搭載しているものの、エンジンに改良が加えられて、最高出力85ps/5000rpm、最大トルク132Nm(13.5kgm)/3800rpmの実力を手にしている。注目はトランスミッションが6段ATから7段DSGに変更されたことで、これにより、カタログに記される10・15モード燃費は、従来よりも約29%良好な17.0km/Lをマーク。これは日本に導入されたフォルクスワーゲンとしては歴代最高の数字だという。
そんな、ちょっと進化したパワートレインを搭載したポロ1.4コンフォートラインは、1.4L自然吸気エンジン相応、つまり、とくに力強いわけではないが、不満なほどでもない、まずまずのスタートを切った。2000rpm以下ではトルクに余裕がないが、2000rpmを超えればまあそれなりに走る。アクセルペダルを大きく踏めば、まわりの流れに遅れを取ることもない。
高速道路などでも、アクセル全開で挑めば、合流や追い越しでもどかしい思いはしなかった。そういえば、1.4Lエンジン&4ATの9N前期型のポロは、こういう場面が苦手だったなぁ。
7段DSGの動きもスムーズだ。気になるところとしては、一般道を60km/h程度で流しているとき、ちょっと加速しようと軽くアクセルを踏み込んでも、ちょうどトルクの細い回転域にあるため、反応が鈍い。こんなときTSIだったらもう少し余裕があるんだろうなぁ。あとは、ゴルフなどに比べるとDSGの作動音が耳につくこともあった。
しかし、実用的には十分なレベルにあることは確かで、燃費も、トリップコンピューターを見るかぎり、都市高速中心の走りで17km/L前後、あまりスピードが上がらない横浜の街中でも11km/Lくらい(エアコンは常にオン)と、なかなかの数字である。
走りっぷりも、確実にレベルが高くなっている。走り出してすぐにボディのしっかり感が高まっていることに気づき、ステアリングやサスペンションの動きにもしなやかさが加わっている。路面によっては、15インチタイヤがショックを伝えたり、また、ボディが軽く上下に揺すられることもあったが、サイズからは想像できないほどの落ち着きようは、日本のコンパクトカーとは一線を画していた。「さすがポロ!」と思わず頷く元ポロユーザーである。
パッケージングに関して、身長167cmの僕でも、後席にはさほど余裕がないことから、ポロのターゲットは、「後席にあまり大人を乗せない人」ということになりそうだ。
(Text & Photo by S.Ubukata)