コンパクトなハッチボディにパワフルなTSIエンジン。ポロ GTIは、その基本構成を見るだけでも、相当魅力的な存在だ。特に、ゴルフ GTIが大きくなりすぎたことに戸惑いを覚える人にとって、格好のスポーツハッチのように思える。日本導入前の海外試乗でも、導入後の試乗リポートでも、評判はすこぶるよい。概ね、その通りといえるのだが・・・
■メチャンコ速い!

その外観は、ちょっと生意気だ。ハニカムデザインのラジエターグリルには、赤い2本のライン。リアバンパーはディフューザー的処理が施され、左下にクロームメッキされたデユアルエキゾーストパイプが覗く。ホイールは17インチの"デンバー"、タイヤは215/40R17サイズ(試乗車はダンロップSP SPORT MAXXを履く)で、ノーマルから15㎜のローダウンもあって、ホイールハウスぎりぎりのスゴ味あるセッティングを見せる。

室内は、ゴルフ GTIと見紛うばかり。チェックパターンのシートに、赤いステッチが入るフラットボトム・シェイプのステアリングホイールやハンドブレーキレバー。スピードメーターには燃料計、タコメーターには水温計を組み込んで、ノーマルとの違いを明確にする。ルーフライニングもブラックで、スポーツモデルであることを強調する。フィニッシュのよさも含めてこのインテリアデザインに、文句をつける人はまずいないだろう。

走り出して驚くのは、なにしろその速さだ。メチャンコ速い! 強力なエンジンに7速DSG、それに軽量ボディがシナジー効果を発揮してのきわめて鋭い加速は、ボディが小さいだけに鮮烈。エンジンは、スーパーチャージャーとターボチャージャー を組み合わせるツインチャージャーのTSI。ゴルフのハイラインにも搭載されるこのエンジンは、さらにチューンが施されて179ps/6,200rpmのパワーを獲得、トルクも25.5㎏m/2,000~4,500rpmと、乾式クラッチを使う7速DSGの許容トルクいっぱいいっぱいにまで高めている。これに、走行状況に合わせて瞬時に適切なギアをセレクトするDSGがドッキングされて、カタログ値で1,210㎏でしかない軽いボディを引っ張るのだ。これで、速くないわけがない。

ジュネーブショーでもらった発表資料によれば、0~100㎞/h加速6.9秒、最高速は 229㎞というパフォーマンスデータ。これをゴルフ GTIに比較すると、なんと0~100㎞/hは同じ、最高速がわずか9㎞/h低いだけ。いかに高性能であるかが分かるだろう。

■ややキツイ乗り心地

しかし、残念ながら、その分犠牲になっている部分もないではない。それは、乗り心地だ。高性能エンジンが引き出すスピードに対応するべく、サスペンションは引き締められていて、タウンスピードでは、40プロファイルタイヤの当たりの強さを感じさせ、路面の凹凸も少なからず伝えてくる。フラットなライド感覚になるのは、高速道路の制限速度を遙かに超える速度域。ボディの剛性がきわめて高いため、突き上げも不快という領域には入っていないのは救いだが、それでもリポーターのような年齢層(アラカン)にはややキツイ。ゴルフのRやGTIに設定されるアダプティブシャシーコントロール(DCC)を、このポロ GTIにも、というのは、無理なお願いかもしれないが、是非検討してもらいところ。

そのハンドリングは、走行シーン、速度域で評価が異なる。素晴らしいというほかないのは、高速コーナリング。例の電子制御式ディファレンシャルロック、XDSが効果的に働いて、通常なら微妙に膨らんでステアリングを切り増ししなければならないようなシーンでも、ステアリングはそのまま、狙ったラインをトレースすることができる。こういうシーンでは、きわめて爽快。快哉を叫びたくなる。アウトバーンはもちろん、ヨーロッパの郊外にあるようなワインディングを飛ばすには、格好のハンドリングといえるだろう。

どちらかというと、苦手の部類に入ってしまうのが、Rの小さいコーナーが連続するような場面。ヘアピンが続くような道では、どうしても強めのアンダーステアが顔を出してしまう。重いエンジンを搭載したことで前後重量配分がさらに前側によって、バランスが悪くなった感触。215のタイヤをもってしても粘りきれないようで、ノーズがコーナーのイン側に、素直に入ってくれない。なかなかリズムに乗れないのだ。

とはいえ、コーナー手前で十分にブレーキング、アペックスを過ぎても少し待つ感じで、フロントタイヤが前を向いたかなというところでやおらアクセルを踏むという運転でも、このクルマは十分に速い。踏み込めば、DSGがたちまち適切なギアをセレクト、エンジンのパワーバンドの美味しいところを使って、猛烈な加速を展開するからだ。

ポロ GTIに求められるものは一体なんだろう。それはおそらく、ゴルフ GTIより小さなボディということで、キビキビとした小回りの利く、いってみれば敏捷さではないだろうか。だが、そうした期待はあまり膨らませないほうがよい。たとえば、ミニサーキットでゴルフ GTIとポロ GTIを比較テストした場合、有利と思えるのはポロ GTIではあるが、多分、優位に立つのはゴルフ GTIだろう。パワーウエイトレシオも、前後重量配分も似たような両車だが、サスペンション形式が違う。ポロはリアがトレーリングアーム、ゴルフのリアは4リンク。4リンクというリアサスペンションは、小さなコーナーであってもノーズを回り込ませることができる、大げさにいえば"魔法のサスペンション"。結果的には、さすがはゴルフ、ということになりそうな気がする。

ただし、思うにこれほど完成度の高い小さなスポーツハッチもなく、その乗り心地に耐えうる若い層ならばベストな選択といえなくもない。本当に小さくて速いクルマを求めているのは、実は中高年層なのだが・・・

(Text by M.OGURA)