フュエルメーターがデジタル絵表示となるポロ TSI。目盛りは8分の1刻みが基本で、ガソリンが残り少なくなって4分の1以下になると、今度は16分の1刻みとなる。東名高速を西に向け走り始めて、このフュエルゲージが最初の8分の1をフェードアウトさせたのは、トリップメーターが170~180㎞を示した頃で、次の8分の1は240~250㎞で消えた。フュエルメーターの動きは鈍く、ちゃんと機能しているのか心配になるほどだった。
ポロ TSIは高速道路の速度域でも直進安定性が高く、ゴルフのようなドッシリ感まではないものの、安楽な巡航が続けられる。また、かなり小気味よい加速を味わわせてくれるため、ドライバーはついついそれを楽しんでしまう傾向になる。100㎞/hは7速で2,000rpmチョイで、それをキープすれば燃費がよくなるはずだが、大型トラックが車線を譲ってくれたりすると、ついアクセルを踏み込んでしまうわけだ。こうして、そこそこ加速を楽しみながら少し速い目の巡航をした場合の燃費は、16.9㎞/Lだった。走行状況を考えると、悪くない。
東京から大阪・堺への往復は、ともあれ高速燃費を計測するのが目的だった。堺からの復路は、フォルクスワーゲンのいう"セービングファン"をトライして、やや遅い目の巡航を心がけた。そうやって、燃費を意識した走りを展開すると、リッター当たり20.2㎞という好データを叩き出した。計測方法は満タン法だから、決して正確なデータとはいえないものの、ひとつの目安にはなるはず。いずれにしても、ハイブリッドでもないクルマが出すデータとしては目を見張る。この優れた燃費は、ポロ TSIの大きな魅力のひとつであることは間違いない。
燃費のよさは、ランニングコストの低減という実質的なメリットばかりではない。やや大げさにいえば、エココンシャスなクルマに乗るということは地球温暖化対策に微力ながらも貢献することであり、胸を張れるとまではいわないが、密かな誇りとはなりうる。少なからず気分がいいということなのだ。これは、重要なポイントだ。
■ポロは凛としてすがすがしい
NA1.4リッターのポロよりさらに性能が、燃費がよくなったポロ TSIは、優等生のなかでも飛び抜けた優等生といえるのではないだろうか。
たとえば、ウォルター・デ・シルヴァ監修のそのシンプルだが力強いボディデザインは、コンパクトなさイズにもかかわらず強い存在感を放っているし、練り込まれたラインだけにそう簡単には飽きられないだろうと予想される。従来モデルが初期型がキュートさを狙ったデザインで力強さにやや欠けたこと、後期モデルがワッペングリルに倣ったことでやや全体にバランスを欠いたデザインになったことなどを考えると、永遠性があって、デザインとしての耐久性が高いと思われるのだ。
NA1.4リッターのポロよりさらに性能が、燃費がよくなったポロ TSIは、優等生のなかでも飛び抜けた優等生といえるのではないだろうか。
その佇まいは、凛としてすがすがしい。前にも書いたが、フォルクスワーゲンのラインナップのなかではエントリーカーというポジショニングにはなるが、クルマ単体としてみればとしてはもう立派なオトナ。アスリートという雰囲気も濃厚だ。ボディの大きさがステータスではなくなりつつある現代において、このコンパクトさ、使いやすさは、むしろこれを選択するドライバーのスマートさ、賢明さを表現するように思う。
■意味ある"小さな高級車"仕様
さて、試乗車のポロ TSIハイラインはほぼフルオプション仕様で、"小さな高級車"ともいうべき内容を持っていた。メーカーオプションであるナビ(RNS510)、バイキセノンヘッドライト/ヘッドライトウォッシャ-、アルカンターラ&レザレットシートが奢られていて、上級モデルにも劣らない贅沢な内容。もっとも、そのオプションのそれぞれの値段は、283,500円、126,000円、157,500円で、車両価格2,420,000円にプラスしての総合計は、なんと2,987,000円。
ポロ GTIより高いクルマになって、ゴルフのトレンドラインはもちろん、コンフォートラインも買えてしまう価格になってしまう。
さて、試乗車のポロ TSIハイラインはほぼフルオプション仕様で、"小さな高級車"ともいうべき内容を持っていた。メーカーオプションであるナビ(RNS510)、バイキセノンヘッドライト/ヘッドライトウォッシャ-、アルカンターラ&レザレットシートが奢られていて、上級モデルにも劣らない贅沢な内容。もっとも、そのオプションのそれぞれの値段は、283,500円、126,000円、157,500円で、車両価格2,420,000円にプラスしての総合計は、なんと2,987,000円。
ポロ GTIより高いクルマになって、ゴルフのトレンドラインはもちろん、コンフォートラインも買えてしまう価格になってしまう。
しかし、これはこれで魅力的な仕様と思う。なぜなら、このポロ TSIに注目するのは、若い人達ばかりではなく、もともとボディサイズの大きなクルマが苦手な女性や、その取り回しに疲れてきた年配層だと推測されるからだ。時代が時代だから、小さなクルマを買うといっても、装備までも簡素なものにするのには、おそらく抵抗がある。ポロ TSIだけに、"小さな高級車"仕様には意味があると思われるのだ。
ポロ TSIに関しては、重箱の隅をつつくようにしても、なかなかその弱点を見つけ出すのは難しい。強いて挙げれば、試乗車のみの不具合と思われるが、運転席が角を曲がる時に微妙に動いて、ちょっと焦ってしまうことぐらいだろうか。前後調整シートレールのストッパーが片側しかないようで、それがキチッと働いていなかった模様。
なんにしても、ほぼ文句の付けようがないポロ TSI。それでも、さらに要望するなら、円高差益の還元と、アイドリングストップ機構の装備だろうか・・・。
(Text by M.OGURA)