2011年1月に一部仕様が変更になった「パサートCC」に試乗、先進のセーフティテクノロジーを体験した。



"コンフォートクーペ"を意味する「CC」を名前に掲げた、フォルクスワーゲンの"4ドアクーペ"がパサートCCだ。クーペのように低くエレガントなスタイルをまといながら、セダンの居住性と快適さを手に入れた、パサートの上級モデルである。

個人的には、フォルクスワーゲンの現ラインアップのなかで、一番カッコいいと思うのだが、そんなパサートCCが2008年10月の日本導入後はじめて、仕様や装備を大幅に見直した。一番の違いは、これまで4人だった乗車定員が5人に増えたこと。後席中央に乗る機会が滅多にないとしても、やはり"プラス1"の安心感は大きい。

従来、V6 4MOTIONに標準搭載されていたプリクラッシュセーフティ機能「フロントアシスト」に、自動ブレーキ機能の「シティエマージェンシーブレーキ」が追加されたのも話題のひとつ。



さらに、この機能が、2.0 TSIに新たに設定された「テクノロジーパッケージ」の1機能として提供されるようになった。テクノロジーパッケージには、この他、アクティブクルーズコントロールの「ACC」やレーンキープアシストの「レーンアシスト」、パークディスタンスコントロール、フルカラーマルチファンクションインジケーターが含まれる。オプション価格は30万4500円である。

今回借り出したのはパサートCC 2.0 TSI。2.0 TSIエンジンは、最高出力が200psから211psに向上している。
もちろん試乗車はテクノロジーパッケージを装着した仕様。シティエマージェンシーブレーキは先の動画のように以前試すことができたので、今回はレーンアシストを高速道路でチェックする。

レーンアシスト自体は、2010年2月の仕様変更で、V6 4MOTIONに追加設定された機能。フロントガラスに設置されたカメラが白線(黄色い線も)をモニターし、ドライバーのうっかりが原因で車線を逸脱しそうになると、システムが注意を促すというものだ。輸入上級モデルでは、いまやこの手の機能は珍しくなく、私自身も、ステアリングを振動させたり、警告音を発したりするシステムを試したことがある。

しかし、パサートCCのレーンアシストは、さらに一歩進んでいる。車線を逸脱しそうになると、システムがステアリングを修正してくれるのだ。電動パワーステアリングを採用するパサートCCならではのアイデアだ。


実際に使ってみると、これがなかなか面白い。左右の白線から離れて走行しているときには何も起こらないが、片方の白線に寄っていき、白線を踏みそうになると車線中央に向きを戻すようステアリングがクッと動くのだ。これなら、警告に気づかず車線をはみ出してしまった......という目に遭わずにすむだろう。

しかも、このレーンアシストは直線だけでなくカーブでも有効なのだ。ある程度のカーブなら、極端な話、ステアリングに触れているくらいでクルマが自動的に曲がってくれる。もちろん、手放し状態が続けばレーンアシストの機能が停止して、ドライバーに注意を促すのだが、アダプティブクルーズコントロールとともに、自動運転への進化を辿るのではないかと、期待(!?)は高まってしまう。それはさておき、シティエマージェンシーブレーキやACCとセットということを考えると、このオプションを選んでおくのは悪くない。

一方、クルマそのものについては、2.0 TSIと6速DSGによる動力性能には余裕があるし、DCC(アダプティブシャシーコントロール)を備えたサスペンションは乗り心地と走行安定性を高い次元で両立。それで、車両本体495万円という価格は実に魅力的だ。

ただ、2.0 TSIではナビゲーションシステムがディーラーオプションとなり、また、「DYNAUDIO」のプレミアムサウンドシステムがオプションでも用意されないのが惜しい。実際に買う場面では、2.0 TSIとV6 4MOTIONのどちらを選ぶか、大いに悩みそうだ。

(Text by S.Ubukata)