目に見える装備を挙げただけでも、十分納得のいく価格である。しかしそれだけではない。このエディション35では、エンジンのパワーアップが図られているのだ。
ゴルフ6 GTIの2.0 TSIエンジンは、「EA888」というタイプ。これに対して、エディション35に搭載される「EA113」は、ゴルフ5 GTIで使われた2.0 TSIの系統だ。いずれも、ボア82.5×ストローク92.8mm、排気量1984ccのスペックは同じだが、チューニングのしやすさという点から一世代前のEA113が選ばれたという。
ちなみにEA113のバリエーションとしては......
・ゴルフ5 GTI:200ps/6000rpm 280Nm/5000rpm
・ゴルフ5 GTI ピレリ:230ps/6300rpm 300Nm/5200rpm
さらに、ゴルフRのエンジンもEA113タイプで、256ps/6000rpmと330Nm/2400〜5200rpmのハイパワーを誇る。エディション35の2.0 TSIはGTIピレリとゴルフRのあいだに位置しており、最高出力235ps/5500〜6300rpm、最大トルク300Nm/2200〜5500rpmの実力を持つ。
まあ、そんなウンチクはこのくらいにして、実際に運転してみると、期待以上の仕上がりが確認できた。たとえばエンジン。ゴルフ6 GTIでも全然不満はないが、こちらは、低回転から明らかにトルクが太く、アクセルを軽く踏み増したときのツキもいい。この時点でノーマルとの違いを見せつけられるはずだ。もちろん一番の違いはレブカウンターの針が後半にある領域での印象で、吹け上がりの良さは一枚も二枚も上手である。その勢いはレッドゾーンの6000rpmを超えても持続し、DSGのマニュアルモードなら6800rpmあたりまで引っ張ってしまうほどだ。
街中や高速巡航時にはやや耳に付く排気音も、ワインディングロードを飛ばす場面では心地よいサウンドに変わる。
18インチとDCCの組み合わせは、17インチのゴルフGTIに比べるとよりスポーティな乗り心地で、首都高速の目地を通過するときなど、ショックを遮断しきれないこともある。それでも家族から文句が出ないレベルには収まっているし、DCCを"コンフォート"にすればほぼショックは解消される。
一方、ワインディングロードでは、DCCを"スポーツ"に切り替えることでロールを抑えた走りが楽しめる。ゴルフRに比べるとパワーでは劣るエディション35だが、車両重量が120kg軽いのは大きな武器。動きの軽快さという意味では、むしろエディション35のほうが上手だろう。
ということで、箱根の山を下りる頃には、エディション35にすっかり惚れ込んでしまった。「あのクルマを買っていなかったらなぁ」と妄想する僕がいる......というのはさておき、お世辞抜きで、いまGTIを買おうと思っている人には絶対にオススメのクルマだと思う。
もしも、すでに売り切れていたらゴメンなさい!
(Text by S.Ubukata)