2008年にデビューしたフォルクスワーゲンの"4ドアクーペ"「パサートCC」が、フェイスリフトを機にフォルクスワーゲンCCに名前を変更。その理由を確かめるべく、南仏ニースで開催中の国際試乗会に足を運んだ。

※ページの最後にアシスタンスシステムの解説動画を追加しました。

メルセデス・ベンツCLSが登場してから、"4ドアクーペ"、すなわち、クーペのようなデザインの4ドアセダンが人気を高めている。低いルーフやサッシュレス(フレームレス)のドアなど、クーペの特徴を備えながら、クーペとは一線を画する後席の居住性や機能性を確保することで、スタリングと機能性を両立する4ドアクーペ。いまではCLSのほか、アウディA7スポーツバックやA5スポーツバック、そして、比較的お手頃な価格帯のモデルとしてはこのパサートCCが、4ドアクーペ人気を支えている。

今後も成長が予想される4ドアクーペに期待を寄せるフォルクスワーゲンは、パサートCCをパサートの最上級グレードから、ひとつ上のクラス、すなわち、パサートとフェートン(日本未発売のラグジュアリークラスのモデル)のあいだのクラスにアップグレードさせることにした。これにともない、名前からパサートの文字を外したのである。

もちろん、名前を変えただけでは不十分なことは重々承知。そこで、フォルクスワーゲンは、エクステリア、インテリアに磨きをかけるとともに、快適性や安全性を向上させることで、名実ともに上級移行を図ろうと考えた。


そして、これが新型フォルクスワーゲンCC。フロントマスクが、最近のブランドフェイス、いわゆる"デ・シルヴァ顔"に一新されている。ヘッドライトを水平基調のグリルで結ぶデザインは現行のパサートよりも堂々とした表情に見える。

リアからの眺めも、ずいぶん印象が違う。旧型のテールランプが円をモチーフにしたデザインだったのに対し、新型では直線的に手直しされた。これなら旧型とも、メルセデスのCLSとも(!?)間違えられることはないだろう。
全長4802×全幅1855×全高1417mmのボディサイズは、全長が少し短くなった以外はほぼ同じ。さらに、ルーフ、前後フェンダーは旧型を踏襲。サッシュレスのドアも引き継がれる。それでも、これだけ変身できたのはお見事というしかない。
エクステリアに比べると、インテリアは変わり映えしないが、ダッシュボードやトリムなどが旧型よりも上質になっている。

デビュー当初は4人乗りだったが、途中からリアのベンチシートが選べるようになったのはご存じのとおり。新型CCでも、標準は4人乗り、オプションで5人乗りが用意される。
 

ラゲッジスペースは、相変わらず広く、リアシートを起こした状態でも奥行き約120cm、532Lの容量を誇る。リアシートを倒して使うことも可能で、その場合には奥行きが約195cmまで拡大する。リアシートとラゲッジスペースの機能性こそが、2ドアクーペとの大きな違いなのだ。
新型CCに搭載された新しいアシスタンスシステムについても触れておこう。注目はレーンアシストとサイドアシストを統合した「サイドアシストプラス」だ。


レーンアシストは、車載カメラが車線を捉え、ドライバーの不注意によりレーンを逸脱しそうになると、ステアリングホイールを振動させるとともに、クルマをレーン戻すようシステムがステアリングを操作するというもの。一方、サイドアシストは、車両後方のレーダーが後続車の存在をチェックし、万一、それに気づかずドライバーが車線変更しようとしたときに、ドラミラーに内蔵されたLEDを点滅させて警告する。

このふたつが統合されたサイドアシストプラスでは、ドライバーの死角に後続車があるにもかかわらず車線変更しようとすると、LEDの警告に加えて、ステアリングホイールの振動と自動的なステアリング操作を行ない、接触の危険を効果的に回避する。


これ以外にも、対向車が現れた場合に、自動的にヘッドライトの照射範囲を調節するダイナミックライトアシストや、長時間の運転によりドライバーの集中力が低下したときに警告を発するドライバー疲労検知システム、30km/h以下で緊急ブレーキを作動させるシティエマージェンシーブレーキなど、アシスタンスシステムの充実が図られている。


Part 2へ続く......

(Text by S.Ubukata)