すでに
move up!に対してこのhigh up!は、装備が充実した上級グレードという位置づけで、エクステリアでは15インチのアルミホイールと185/55R15タイヤ、そして、フォグランプを装着するところがmove up!との識別点だ。
一方、インテリアでは、ステアリングホイールとパーキングブレーキグリップが本革巻きになり、また、燃費や平均速度などがチェックできるマルチファンクションインジケーターが装着されている。さらに、ファブリックシートながら、シートヒーターが付くのもうれしいところ。もし僕が買うならこのhigh up!を選択するだろうな。
ところで、市販型の4ドアモデルを見るのは、実は今回が初めて。4ドアになっても、全長は2ドアとかわらず、デザインも2ドアと甲乙付けがたいバランスの良い仕上がり。小さいのに存在感があり、ポロやゴルフとは違うフレンドリーな雰囲気には好感を抱く。
一方、後席はポロより50mmもホイールベースが短いにもかかわらず、大人が座っても十分なスペースが確保されているのがうれしい点。これなら、多少長い距離でも後席のゲストに辛い思いをさせないで済む。
前置きはこのくらいにして、さっそく運転席に乗り込み、クルマをスタートさせると、ヨーロッパで試乗したときの印象が蘇ってきた。日本の軽自動車やスモールカーとは一線を画するカッチリとしたボディにまず感心し、それを支えるサスペンションの動きも実に落ち着いている。乗り心地もマイルドかつスムーズな仕上がり。スピードを上げていくと、路面によってはリアの上下動が気になることもあったが、基本的にはフラットさは十分で、優れた直進安定性とあいまって、ドライバーはえもいわれぬ安心感に包まれる。これぞ、フォルクスワーゲン流の走りである。
一方、ボディサイズが小さいおかげで街中の狭い道でも躊躇せず進んでいけるのがup!のアドバンテージだ。小さいクルマがほしいけど、走りを諦めたくない......そんなクルマ好きには格好のスモールカーといえるだろう。
3気筒ということで、エンジンを回すとそれなりにノイズは高まるのだが、思ったほど気にならない。しかも、以前、フランスで試したときよりも静粛性が向上しているように思えた。
これは一例だが、初めて運転する人はたぶん戸惑うだろう。そして走りだすと、シフトアップの際に加速が途切れ、身体が揺り戻される感覚が伴う。とくに低いギアでシフトアップしたときや、アクセルペダルを大きく踏み込んでいるときには、これが顕著になる。これは、同様のトランスミッションを搭載するフィアット500やスマート・フォーツーにも見られる現象。ちなみに、2組のクラッチを交互につなぎかえることで、この感覚を解消したのがDSGというわけだ。
ただ、この空走感はしばらくup!を運転していたら、あまり気にならなくなった。ドライバーの身体が慣れてしまったのだ。さらに、シフトアップのタイミングを見計らってアクセルペダルを少し戻すというテクニックを使うと、この空走感が軽減されるから、ぜひ試してほしい。
むしろ気になったのはシフトダウンのもたつきで、登り勾配で加速が必要なときや、高速道路の合流でイッキにスピードを上げたいときなど、アクセルペダルを思い切り踏み込んでもなかなか加速が始まらず、後ろから速いクルマが迫ってくる......という場面が何度かあった。解決策としては、あらかじめマニュアル操作でシフトダウンしておけばいいのだが、そういう意味ではこのASGこそパドルシフトが必要ではないだろうか?
燃費に関しては、燃費計がついているhigh up!では、高速を制限速度で巡航した場合が22km/L台、ストップ&ゴーの多い都内が14km/L台という数字。また、燃費計のないmove up!(4ドア)の燃費を満タン法で計算したところ、高速が21km/L台、高速中心で一般道も含む区間では17km/L台を記録した。いずれもエアコンはオンの状態で、外気温が30度を超える場面がほとんどだったことを考えると、この数字は非常に優秀だ。
というわけで、DSGや従来のオートマチック、あるいは日本車のCVTに慣れた人には、up!のASGは確かにとっつきにくく、運転にはコツが必要かもしれない。だからといって、それがup!を選ばない理由にはならないだろう。新しいスモールカーとしての魅力がそれを上回るからだ。
それだけに、実際に購入を検討している人は、短時間ではなく、できればじっくりと時間をかけて試乗することをおすすめする。「あばたもえくぼ」というくらいだから、ASGを積極的に楽しんでしまうのが不満解消の近道かもしれない。
(Text by ub! / Photos by Volkswagen Group Japan)