フルモデルチェンジしたゴルフを国内で初ドライブ。「ゴルフTSIコンフォートライン」と「ゴルフTSIハイライン」を試してみる。

※ギャラリーはこちら


2013年5月20日にジャパンプレミアを果たした新型ゴルフことゴルフ7をプレス試乗会でチェックした。試乗会のベースは静岡は裾野にあるゴルフ場。気持ちのいい写真を撮るには格好のロケーションだ。

ゴルフ7の概要やラインアップについては
ゴルフ6が登場したときは、ところどころにゴルフ5の影を感じたものだが、このゴルフ7は素直に「フルモデルチェンジしたんだ!」と思える新しさがある。しかも、パネルやダッシュボードのつくりなども明らかに上等になった。

それでいて運転席からの眺めは、ゴルフの文法どおりすっきりしている。大きく見やすいアナログメーター、いつもの場所にあるスイッチ類。はじめ、マルチファンクションステアリングのスイッチに戸惑ったが、それでもマニュアルを見るまでもなくすぐに使いこなせるようになった。

そうそう、エレクトロニック・パーキングブレーキも、ゴルフとしては新しい装備だ。センターコンソール付近が広々としているのはそのためだ。


唯一すっきりしないのはディーラーオプションのナビ。実は現時点でセンタークラスターに入るメーカー装着ナビが用意されていないのだ。しかし、2013年内には左の8インチモニター付きナビが用意されるとのこと。これがほしい人はもうしばらく辛抱を。
1.2 TSIエンジンは、以前に比べて複雑な形になっている。それもそのはず、ゴルフ6用の1.2 TSIがSOHCだったのに対し、ゴルフ7ではDOHCに改められている。DOHCのほうがバルブタイミングのコントロールがしやすく、効率が高められるという判断だ。
限られた試乗時間ということもあり、さっそく走りだすと、噂どおりの高い静粛性に恐れ入る。ゴルフ5からゴルフ6にモデルチェンジしたときも静粛性の向上に驚いたが、ゴルフ7はそれを上回る静かさだ。

同時に感じたのが、クルマの軽快さ、そして、よりスムーズな動きである。それは、洗練という言葉に置き換えられるかもしれない。電動パワーステアリングのフィーリングも一級品で、不自然さとは無縁である。

ところで、このコンフォートラインには、トーションビーム式のリアサスペンションが採用されている。軽量化のために新開発されたというこのサスペンションは、ゴルフらしい快適で落ち着いた乗り心地を示し、高速のフラット感もまずまずと、十分に及第点が与えられる仕上がりだ。ただ、205/55R16タイヤの組み合わせでも路面によってはリアからのショックが伝わることがあった。


新開発の1.2 TSIエンジンは、ボディの軽量化が図られたこともあり、必要十分なトルクを発揮する。高速道路の合流で加速するような場面でも5000rpm超までスムーズに回りスピードを上げてくれるから、ストレスを感じることはなかった。

一方、低回転でアクセルペダルを踏み増すようなシーンでは、多少反応が遅れることがある。いわゆる"ターボラグ"だが、従来のSOHC版1.2 TSIには見られなかっただけに、気になってしまう。

その点、ハイラインは納得のいく仕上がりを見せている。"タングステンシルバー"の試乗車は、オプションのDCCが装着され、これにともない17インチアルミが10スポークから5ダブルスポークに変更されている。


また、ハイラインではオプションのバイキセノンヘッドライトを選ぶと、メインビームを囲む部分が単なるメッキからLEDポジションランプとなる。インテリアは、ピアノブラックのデコラティブパネルが上質さを押し上げる。


新開発の1.4 TSIエンジンは、ターボのみの過給ながら最高出力140ps、最大トルク25.5kgmを生むハイパワー仕様。そのうえ、あまりパワーを必要としないとき、4気筒のうち2気筒を休止するアクティブシリンダーマネージメント(ACT)を採用することなどで、19.9km/Lの燃費を叩き出す。
このエンジンの実力はすでに海外で体験済みなので驚くことこそなかったが、2000rpm以下の低回転から力強いトルクを発揮し、アクセルレスポンスも申し分ない。従来の122ps仕様の1.4 TSIと比べ、全域にわたってトルクが厚みを増した印象で、そのうえ高回転までストレスなく吹け上がるスポーティさを備えている。

メーターパネルには、2気筒モードを示すメッセージが頻繁に表示されるが、その切り替えにショックや違和感がともなうことはない。試乗会というシチュエーションのため燃費は計測できなかったが、従来以上の実燃費が期待できそうだ。

マルチリンクのリアサスペンションとDCCが搭載された試乗車は、コンフォートライン同様、軽快でありながら、より落ち着いた動きを見せる。225/45R17タイヤを履くにもかかわらず、乗り心地はむしろ16インチのコンフォートラインよりも快適で、高速のフラット感も明らかに上手。スポーツモードに切り替えても、快適さは十分に保たれるが、ノーマルモードがほぼオールマイティなセッティングだけに、ほとんどの場面はノーマルモードで済んでしまいそうだ。

残念ながらDCCのないハイラインを試すチャンスはなかったが、個人的には14万7000円のオプションはぜひとも選択したい。


あえて重箱の隅をつつくとすれば、「ドライビングプロファイル機能」のモード選択ボタンが(左ハンドル仕様と同じ)シフトレバーの左にあるので操作しにくい。スタート/ストップの解除ボタンとともに右側に移動してほしいものだ。

しかし、文句のつけどころはそのくらいで、ゴルフTSIハイラインの出来映えはほぼパーフェクトといえる。


新開発のMQBプラットフォームは、新型ゴルフに劇的とはいえないまでも、大きな進化をもたらし、ゴルフを追うライバルたちに大きく水をあける結果となった。なかでも注目は1.4 TSIを積むハイラインで、ドライビングを楽しみたい人にはお勧めである。

(Text by S.Ubukata / Photos by M.Kobayashi)