ついに日本デビューを果たした新型ゴルフGTIに試乗。7代目はどう進化した?




すでに
ゴルフGTIの車両概要については前述の
標準のファブリックシートは見慣れたタータンチェック柄。実際はデザインがリニューアルされていて、従来の「ジャッキー」から「クラーク」に変更されているというが、シート生地を見ただけでテンションが上がるのは、このゴルフGTIくらいだろう。

フラットボトムのステアリングホイールは、標準とはセンターパッドやスポークの形状は異なり、レッドのステッチや専用のロゴプレートがGTIであることを主張する。

さっそく、スタートボタンを押してエンジンを始動。アイドリングを始めたEA888型2.0 TSIは、とても控えめな印象だ。しかし、そう思えたのも走り出すまで。クルマが動き出し、アクセルペダルを載せた右足に軽く力を入れただけで、標準のゴルフとは異なる息づかいが感じ取れるのだ。荒々しいとまではいかないが、少しザラついた感触を伝えるような演出。単に速いだけのゴルフではないことをアピールしているかのようだ。


新しい2.0 TSIは格段に力強い。それはアクセルペダルを踏み込んだ瞬間にわかる。排気量は変わらないのに、明らかにレスポンスは素早く、そのうえ、ひとまわり、いや、ふたまわりはトルクが太くなっている。旧型とはまるで別モノだ。

低回転域から強力なトルクを発揮するおかげで、街中では回転を抑えたスムーズな運転が可能だ。乗り心地は少し硬めながら、十分快適なレベルに仕上がっている。目地段差を越えるような場面では多少ショックを伝えてくるが、これもGTIらしいスポーティさをアピールする演出ではないかと思えてくる。


演出といえば、今回、フォルクスワーゲンとして初めて採用されたプログレッシブステアリングも、ゴルフGTIのスポーティさを引き立てている。街中でも、交差点を右左折するような、大きくステアリングを切る場面では、くいっとノーズが切れ込んでいき、クルマの動きがとても機敏に感じられるからだ。

しかし、ゴルフGTIのこうした印象が、ただの演出でないことは、少し速いスピードでコーナーを攻めてみればすぐにわかる。面白いくらい、よく曲がるのだ。


今回は富士スピードウェイのショートコースを走る機会に恵まれた。ESC Sportモードを選び、タイトなコーナーに挑むが、よほどのオーバースピードで突っ込まないかぎりアンダーステアは顔を出さず、派手なタイヤのスキール音とともに、実に軽快にコーナーを走り抜けていく。ESCの介入によりエンジン出力が抑えられることもなく、誰もが腕が上がったと誤解しそうなほど、思い描いたラインをトレースできるのが、新型ゴルフGTIなのだ。


もちろん、これには最大トルクが70Nmもアップした2.0 TSIが大きく貢献している。踏めばどこからでも力強い加速を見せるこのエンジン、スペック上は1500〜4400rpmで最大トルクを発揮することになっているが、体感上は6000rpmを超えてもなお爽快な加速が続く。

とにかく速く、労せずして曲がる新型ゴルフGTI。それを、「つまらなくなった」という人もいるだろうが、これまで以上にドライバーとの一体感を強めたという点では、トップレベルのコンパクトスポーツと呼ぶにふさわしい仕上がりだと断言できる。


優等生すぎるのが癪に障るが、ゴルフGTIには抗しがたい魅力がある。クルマが好きなら、運転が好きなら、なにも迷う必要はない。

ゴルフGTIなら、きっと期待に応えくれるはずだ。

(Text by S.Ubukata / Photos by M.Kobayashi)