ゴルフの最強グレード「ゴルフR」がついに日本上陸。その走りをチェックするために、雪の残るワインディングロードを目指した。



ゴルフのRモデルとしては4代目となる「ゴルフR」が日本でも発売になった。2013年11月の東京モーターショーがジャパンプレミアだったから、あれから3カ月足らずでデビューしたことになる。


ご存じのとおり、ゴルフRはゴルフシリーズのフラッグシップモデルで、ゴルフ4とゴルフ5の時代には、コンパクトなボディに3.2L V6エンジンを搭載したことが注目を集めた。しかし、先代のゴルフ6からはエンジンのダウンサイジングを図り、2L直噴ガソリンターボの2.0 TSIを採用。にもかかわらず、最高出力、最大トルクともに3.2L V6を上回る256ps、330Nmを実現している。

その流れは、このゴルフ7にも受け継がれるとともに、新型ではさらに24ps/50Nmアップの280ps/5100〜6500rpm、380Nm/1800〜5100rpmを達成。"史上最強のゴルフ"が世代交代を迎えたのだ。
ここでひとつ疑問なのが最高出力の数字。確か東京モーターショーでは「300ps」だったはず。ドイツ本国のスペックも300psなのだが......。そこでVGJに問い合わせると、厳しい日本の夏に対応するため、デチューンされているとのことだ。

ゴルフRの特徴のひとつに、4MOTION、すなわち、フルタイム4WDの搭載が挙げられる。当然、最新のゴルフRも4MOTION仕様で、第5世代ハルデックスカップリングを用いてフルタイム4WDを実現している。組み合わされるトランスミッションは6速DSGだ。
パワートレイン以外にも注目すべき点はまだまだあるが、それについては
左右4本出しのエキゾーストパイプとディフューザーによって、リヤビューもスポーティかつ凄みを増している。さらに試乗車はR専用色のラピスブルーメタリックを纏うこともあり、特別なゴルフというオーラを放っていた。
ドアを開けると、ブラックレザーのトップスポーツシートがドライバーを迎えてくれる。夜間なら、ドアトリムやドアシルパネルに輝くブルーのイルミネーションに目を奪われるはずだ。

サポートの良いシートに身を委ね、エンジンのスタートボタンをワンプッシュ。すると、ブルーの光を放つ速度計、回転計の針がいわゆる"ニードルスイープ"の儀式を行いながら、エンジンが始動。太いエキゾーストノートがキャビンに流れ込んでくる。ドライバーをその気にさせるには十分な演出だ。


まずは「ノーマルモード」でスタート。ゴルフGTIよりも110kg重量の増したゴルフRだが、パワフルなエンジンのおかげで走り出しは軽快。しかも、4MOTION化によりスムーズさに磨きがかかったのも見逃せない。

すぐにわかったのが乗り心地の良さ。もちろん、標準モデルに比べると足まわりは硬めのセッティングで、タイヤの"アタリ"もざらっとしているが、これならガマンせずに街乗りできるレベル。意外かもしれないが、DCC付きのGTIよりもむしろコンフォートな印象なのである。


スピードを上げると、きわめて高いボディ剛性とがっちりと路面を掴む4MOTIONが、この上ない安心感をドライバーに伝えてくる。まさに矢のように突き進むスタビリティと、無駄な動きを抑えたフラットライドは、快適な乗り心地とともに、グランドツーリングには打ってつけの特性といえる。

もちろん、高い直進安定性だけがこのクルマの持ち味ではない。ワインディングロードにゴルフRを持ち込み、「レースモード」を選択すると......。


DSGのシフトプログラムがSモードに変わるとともに、スロットルレスポンスが高まったゴルフRは、まさに水を得た魚のようにコーナーを駆け抜けけていく。2.0 TSIエンジンは6000rpmを超えても勢いが衰えることなく、圧倒的な加速を見せつけてくれるのだ。その際、高まるエキゾーストノートの気持ちよさをいったら......。「4気筒エンジンとは思えない迫力あるサウンドだね」とは、撮影していたカメラマンのコメントだ。

ハンドリングは、ターンインこそGTIの鋭さはないが、より高いスピードで狙ったラインをトレースできるのがゴルフRの真骨頂。4MOTIONが誇る優れたトラクションと、しっかりとボディの動きを受け止めるサスペンションが、GTIとは別次元の走りをもたらしてくれるのだ。


スポーツモデルという意味ではGTIとこのゴルフRはおなじ括りのクルマだが、その性格はだいぶ違う。俊敏な走りを実現するGTIに対して、ゴルフRはより上質なグランドツアラーとしての資質を高めたクルマなのだ。

もちろんそれでもエキサイティングなドライビング体験をもたらしてくれるゴルフR。「大人のスポーツカー」と呼びたいクルマである。

(Text by S.Ubukata / Photos by M.Kobayashi)