日本におけるフォルクスワーゲンのフラッグシップモデル「トゥアレグ」がデビューから4年を経てマイナーチェンジ、日本の路上を走り始めた。
マイナーチェンジの内容は
このうち、今回試乗したのはトゥアレグV6アップグレードパッケージで、通常のスプリングを搭載したモデルだ。CDCエアサスペンション(+電動パノラマスライディングルーフ)はオプションである。
ちなみに、CDCエアサスペンションを選ぶと、シフトレバー手前、左側の"穴"のところが車高調整用のダイヤルになる。
さっそくキャビンに足を踏み入れると、見慣れたいつもの眺めが広がっていた。上質なつくりに加えて、無駄な飾りとかゴテゴテしたデザインとは縁のないすっきりとしたコックピットがまさにフォルクスワーゲン。なんとも居心地がいい!
張りのあるレザーシートに座ると、少し高いアイポイントのおかげで見晴らしは良好。この視界の良さを理由にSUVを選ぶ人は多いが、確かにこの眺めに慣れてしまうと、普通のクルマを運転するのが不安に思えてくる。
少し気になったのが、ナビゲーションの画面。ほぼ真後ろを向いていて、ドライバーから多少見にくいのだ。最近のモデルは"ドライバーオリエンテッド"をうたうものが多く、センタークラスター(およびナビ画面)がドライバー側に少し傾いているのに慣れたせいだろうか。
そんな些細なことはさておき、久しぶりに運転したトゥアレグV6は、なかなかスポーティな走りっぷりだ。旧型に比べて約70kgのダイエットに成功した現行型をはじめて運転したときにも動きが軽くなったと感じたが、そのマイナーチェンジ版はさらに輪をかけてスポーティになった。
とはいっても、車両重量が2190kgもあるトゥアレグだから、コンパクトカーのような軽快さはないが、このボディサイズと重量のわりに、ちょっとしたコーナーでは優れた回頭性を見せてくれる。このトゥアレグV6にはオフロード性能を高めた4WDの「4X MOTION」が搭載されているのだが、オンロード重視の「4MOTION」に変更されたのかと疑ってしまったくらいだ。
それでいて乗り心地は十分快適なレベルで、目地段差を越えたときのショックの遮断もまずまず。高速道路でのスタビリティも上々で、そのカッチリとしたボディ、ゆったりとしたサイズのキャビンもあいまって、絶大な安心感とともに移動が楽しめる。
3.6 FSIエンジンは発進こそやや緩慢な印象があるものの、走り出してしまえば自然吸気エンジンならではのレスポンスの良さ、そして、狭角V6らしいスポーティな吹け上がりが運転を楽しくさせる。回したときのエンジンサウンドもエキサイティングで、SUVを操っていることを忘れてしまうほどだ。
面白いのがいわゆるアイドリングストップ機能の「スタート/ストップシステム」。機能そのものはマイナーチェンジ前のトゥアレグV6にも搭載されていたのだが、最新版では以前とは違う動きを見せる。走行中にブレーキを踏んでクルマを停車させようとすると、停止の直前、具体的には車速が7km/hに落ちたところでエンジンが先に停止するのだ。こうした工夫で、少しでも多くの燃料を節約しようというわけだ。ヨーロッパでは最新のアウディにもこの方式が採用されはじめていて、フォルクスワーゲンも今後この方式が増えてくるのだろう。
さらに、アクセルをオフにしたときにエンジンとトランスミッションを切り離してエンジンブレーキがかからないようにする"フリーホイール"機構も採用するなど、燃費向上策が追加されたトゥアレグV6だが、高速道路を流れに任せて走ったときの燃費は8km/L台。街中ではさらに燃費は落ちる。もちろん、サイズを考えれば決して悪い数字ではないが、あまりお財布に優しくないのも確かだ。
そうなると、どうしても期待してしまうのがフォルクスワーゲンが誇るTDI(直噴ターボディーゼル)エンジンの導入だ。たとえば3LのTDIなら、このV6 3.6Lよりも強力なトルクを発揮しながら、燃費は向上。メルセデス・ベンツやBMWといったドイツメーカーがクリーンディーゼルの導入により、とくにSUVで良好な販売を見せていることを考えると、日本のトゥアレグにもいちはやくTDIを用意してほしいものだ。
(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa)