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日本でゴルフGTEのステアリングを握る日がついに訪れた。ちょうど1年前、スイスの国際試乗会でドライブしてからというもの、この日が来るのが待ち遠しかった。
ゴルフGTEは、ゴルフGTI、ゴルフGTD(日本未導入)に次ぐ第3のスポーツモデル。GTIがガソリンエンジン、GTDがディーゼルエンジンを搭載するのに対し、GTEが積むのは1.4 TSIエンジンと電気モーター、そして、大容量リチウムイオンバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムである。そう、「E」は電動化を意味しているのだ。
クルマの特徴については
さっそくスタートボタンを押すと、システムの始動を知らせるチャイムとともに"パワーメーター"の針が0の位置に移動し、マルチファンクションディスプレイの左下に「READY」の文字が表示された。システム始動直後は、バッテリー残量が足りない場合などを除いて、Eモードにセットされる。
セレクターをDに入れてブレーキペダルから足を離すと、ゴルフGTEはゆっくりと動き出した。パワーメーターの下の方にある小さい回転計は0を示したままだ。アクセルペダルを軽く踏むと、期待以上に余裕あるトルクを発揮するモーター。EV(PHEV)を味わう瞬間だ。
動き出したあとの加速も力強く、かつ、スムーズで、ゴルフTSIハイラインに比べて200kg以上重いことが信じられないくらい。Eモードでの最高速は130km/hだけに、一般道はもちろん、高速や高速道路でも流れをリードできる実力を備えているから、ガマンの走りを強いられることはない。
ちなみに、Dレンジで走行中にアクセルペダルから足を離すと、エンジンブレーキならぬ"回生ブレーキ"による減速はほとんどなく、そのまま惰力走行を続ける。一方、Bレンジを選んだり、マニュアルシフトをした場合は、やや強めの回生ブレーキがかかり減速。アクセルペダルの踏み具合で回生ブレーキの強さがコントロールできるので、多くの場面でブレーキを使わずにスピードがコントロールできるのがガソリン車とは異なるところだ。
一般道と高速を30kmほど走行したところでバッテリーでの航続可能距離が2kmになり、Eモードが解除され、自動的にハイブリッドモードに切り替わる。EVと異なり、この状態でも走行が続けられるのがPHEVのいいところで、充電場所を探し回る必要はない。
ハイブリッドモードでも、発進はモーターが担当し、スピードが上がるとエンジンが始動する。ここからはエンジンが主導権を握るのだが、回転計が小さいことと、ゴルフの高い静粛性のおかげで、注意していないとエンジンが始動したことに気づかないほどだ。アクセルペダルを踏み増すと、即座にパワーメーターが瞬時に右に振れる。モーターがエンジンをアシストするおかげで、いつもの1.4 TSIより力強い加速が手に入るのもハイブリッドカーの醍醐味である。
アクセルペダルを緩めたときの反応はEモードと基本的に同じ。ただ、ハイブリッドモードではエンジンが自動的にストップし、そこから軽く加速するくらいならモーターだけで十分用が足りることも。
気になる燃費だが、高速道路を制限速度で走ったときが16km/L台、少しペースを上げたときでも15km/Lを上回った。一方、ストップ&ゴーの多い都内でも15km/L台をキープ。JC08モード燃費の23.8km/Lを超えることはなかったが、エアコンを使用した状態で、ストレスのない加速を見せながら、これだけの低燃費というのはなかなかのもの。信号の少ない一般道なら、さらなる好燃費が期待できるだろう。
ところで、試乗車では「DCCパッケージ」が選ばれていて、DCCとともに225/40R18タイヤ+7.5J×18インチホイールが装着されていた。路面によってはタイヤ&ホイールがゴトゴトと軽いショックを伝えてくることもあったが、やや硬めとはいえ乗り心地は快適なレベルに保たれるし、高速でのフラット感も上々。日本のPHEVには変に硬さだけが目立つクルマもあるが、ゴルフGTEには無縁の話だ。
一方、ハンドリングはGTIの俊敏さには及ばないものの、素直な動きを見せ、アンダーステアも上手く抑え込まれている。約120kgのバッテリーをリヤアクスル手前に配置したことで低重心化が図られ、また、後軸重が増えたことが、気持ちのいいハンドリングを生み出しているのだろう。
驚いたのはこのときの燃費。ワインディングロードを含めて約100kmを走ったが、14.1km/Lという数字をマークしたのだ。その前後でバッテリーの"収支"はほぼ0だったから、充電した電力で稼いだ数字でないのがすごいところだ。
価格の高いPHEVだけに、浮いた燃料代で元を取るのはなかなか難しいが、新しい時代のファン・トゥ・ドライブを先取りできることを考えると、ゴルフGTEを選ぶ意味は大きいと思う。
(Text by S.Ubukata / Photos by M.Arakawa)